死にたい時、音楽は「逃げ道」になってくれる アブドゥーラ・イブラヒムを聴いてほしい

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかし、その表現の方法は変わっているというのが私の印象だ。取り分け、この10年ほど、アブドゥーラは確固たる「自分の音色」を獲得し、それによって自らの音楽を構成している。その分岐点になったアルバムがこの『SENZO』である、と私は感じている。

かつて攻撃的なサウンドで人間の怒りや苦しみまでをも表現した若いアブドゥーラが、歳を経るにしたがって慈しみ深い深遠なサウンドで人の瑕疵(かし)を包み込むようになってきた。そして、その変化の中にあってずっと言い続けていることの一つが、「生きてていいんだよ」ということなのだ。

どこにも逃げ場所が見つからない時に

つらいことや悲しいことがあった時に、どこにも逃げ場所が見つからない時に、是非このアブドゥーラの音楽を聴いてもらいたい。そこには、何よりも暖かい大地の、そして人間の息吹が収められている。

アブドゥーラの音楽と、そしてアブドゥーラ・イブラヒム自身と出会えたことは、私の人生においても非常に重要なことである。

大丈夫。生きていて良い。

『SENZO』/Abdullah Ibrahim リリース:2008年
ジャケットをクリックすると、Amazonのサイトにジャンプします
01. Ocean & the River
02. In the Evening
03. Blues for Bea
04. Prelude for Coltrane
05. Aspen
06. Blues for a Hip King
07. Third Line Samba
08. Tookah
09. Pula
10. For Coltrane
11. Dust
12. Corridors Radiant
13. Jabulani
14. Dust(reprise)
15. Nisa
16. ‘Senzo’- Contours and Time
17. Meditation / Mummy
18. Banyana, Children of Africa
19. Mamma
20. Blues Bolero
21. In a sentimental Mood
22. Ocean & the River

 

プレタポルテの関連記事
京成線を愛でながら聴きたいジャズアルバム(福島剛)
部屋は「あなた」である――掃除をするか、旅に出るか(名越康文)

 

福島 剛 ジャズピアニスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ふくしま たけし

1979年東京都出身。青春時代のすべてを柔道に捧げた後、京都府立大学在学中の20歳の頃よりピアノを始める。故・市川修氏に師事。2006年より「ボク、ピアノ弾けます」という嘘とハッタリによりプロの音楽家となる。プロとしての初めての仕事は故・ジョニー大倉氏のバンド。07年、活動の拠点を地元、東京江戸川区に移す。各地でのライブ、レコーディング、レッスン、プロ野球(広島カープ)観戦、魚釣り、飲酒などで多忙な日々を送る。

主なアルバム作品に映画作品のサウンドトラック『まだあくるよに』(2012年 ※iTunesの配信のみ)、お笑いジャズピアノトリオ「タケシーズ」による『みんなのジャズ』(2013)、初のソロピアノアルバム『Self Expression』(2015)がある。座右の銘は「ダイジョーブ」。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事