政治家の皆さん、「もっと経済を勉強しなさい」 いくら何でも教養や「真摯さ」に欠けている

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 政治家の方々には、「もっと経済を勉強しなさい」と声を大にして言いたいところです。経済政策とは誰のために存在するのかというと、普通の暮らしをしている国民のために存在しているのです。ところが今の経済政策はどちらを向いているのかというと、富裕層や大企業のほうばかりを向いてしまっているのです。このような方向性を推し進めてしまうことによって、中流と呼ばれる人々がいっそう疲弊し、「日本のトランプ」が出現する可能性すら捨てきれないのではないかと心配になってしまいます。

生産性が低い「政治」こそ大きく変えるべき

そもそも、日本経済を活性化させるためには、日本全体の生産性を引き上げていかねばなりません。わかりきったことですが、政官界と産業界が一致協力して英知を結集し、さまざまな分野で創意工夫をしていくことが求められています。しかし、今の日本を見ていてつくづく不安なところは、日本でいちばん生産性が低いのは政治家ではないかと随所で感じさせられるということです。

国会議員に求められる最低限の素養は、一般の人々よりも教養や知識を持っているということです。そして、そのうえに求められるのが、国民のために一生懸命になって働くという姿勢です。国民の立場からすれば、最低限の素養がない議員に国の仕組みづくりなど任せられるはずがないですし、怠惰な議員に報酬を支払い続けるのは税金の無駄遣いにほかならないからです。ですから、オリンピックで金メダルは取ったとはいえ、いまだに国の仕組みがよくわかっていない議員や、審議の場で携帯メールや読書をたしなんでいる議員は、即座に辞めてもらったほうがいいのです。

とりわけ閣僚ともなれば、その分野のスペシャリストであるだけでなく、他の分野の知見からもその分野を見ることができるゼネラリストである必要があるはずです。加えて、ほかの議員よりもひたむきに仕事をする真面目さが求められているはずです。「歯舞」を読めなかった沖縄北方担当大臣、国会答弁をまともにできず自身が不勉強であると認めた法務大臣、誤った法案を読み上げた地方創生担当大臣などは、スペシャリストにほど遠いばかりか、一般的な教養や真面目さ・真剣さすら持ち合わせていないのではないでしょうか。

私が一人の国民として議員の方々にお願いしたいのは、「もっと勉強をしてほしい」「もっと仕事に真摯に取り組んでほしい」ということです。もちろん、日々研鑽を積んでいる議員がいることも承知しておりますが、全体としてはあまりにレベルが低すぎると言わざるをえないのです。7月の参議院選挙において、必要な教養をまったく持っていないばかりか、「国会がない時はコンサートをしていいですか」などというタレント候補を立てることは、国民を愚弄しているとしかいえないでしょう。

この際ですから、政治家の質を向上するために、選挙に立候補するための試験制度を導入したらいかがでしょうか。当然のことながら、ベテラン議員の方々も選挙のたびに試験を受けなければなりませんから、仕事の大半が会合でのあいさつ回りという現状に甘んじることは難しくなるでしょう。それができないようであれば、国からの独立性を保った政治家の評価機関をつくるしかないのではないでしょうか。

中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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なかはら けいすけ / Keisuke Nakahara

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『日本の国難』『お金の神様』(ともに講談社)、『ビジネスで使える経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』を好評連載中。公式サイトはこちら

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