人生はエースコックと共に「はるさめヌードル」《それゆけ!カナモリさん》

 そんな、魅力あふれるがっつりワールドから泣く泣く離れなくてはならないオトコたちに、「がっつり味」×「健康第一!」という象限に投入されているのが「はるさめヌードル」だ。「がっつりで健康」という成立しづらいポジションを可能にしているのは、がっつりブランドの代名詞でもあるエースコックならではのことだ。「うま辛チゲ」「胡麻ねぎ豚骨」「熟成ルゥカレー」「とんこつ醤油」「豚キムチ」など“一杯の満足”を期待させるラインナップ。でも、カロリー200kcal未満。

 「サラリーマン金太郎」や「特命係長 只野仁」で見事な肉体と格闘アクションを見せつけた中年の星・高橋克典が、「カロリー制限すべきだよ!」と語りかける。「オレもあんな大胸筋に」という憧れを醸成し、「低カロリーだけど、がっつり味なら自分もダイエットできるかも!」と手に取らせるポジショニング。

 学生時代にはラグビーやらテニスやら体育会系サークルに所属し、「おれいくら食べても太らないモンね。ガッツリ食うもんね」とスーパーカップをスープまで飲み干していた筋肉自慢の男性が、世間の荒波にもまれ、妻と子を必死で養い、接待で飲み食いを重ね、身体にたっぷりと脂肪を蓄え、女子社員にお腹のたるみを指摘され、「お腹気になるもんね。でも心はガッツリだもんね」と、お昼時に、はるさめヌードルをすする。

 泣けてくる。エースコックを狂言回しに、歩んできた人生が、目に浮かぶようではないか。なんという哀愁。なんという顧客生涯価値。最近流行の「アメトーーク」ばりに、「カップ麺芸人」を集めたら、きっと「エースコックさんはすごいんですよ!」と口を揃えることだろう。

 いつまでも大人になりきれないオトコたちの心を「あなたはがっつりのままでいいのよ」と全肯定しつつ、「でもいつまでも健康でいてね」と、母親のように優しく包み込む。

 エースコックさん。ありがとう。


《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2009年7月24日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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