増殖する「中高年派遣」34万人の悲鳴 法改正を逆手にとった「派遣切り」も
ロッカールームに呼び出されたのは、その日の夕方だった。リーダーは、「不満があるなら直接自分に言え」と言った後、別の社員と相談するよう告げた。すると、いきなり冒頭の通告──。
この社員は保身から、面倒な問題を背負いたくなかったようだ。後日、Aさんは派遣会社の営業マンに「どうにかならないですか」と頼んだが、翌月いっぱいで一方的に契約を打ち切られた。のちに理由は、役員に告げ口をしたことだと聞かされた。
「ショックでした……。お前は派遣だからさっさと辞めろといわんばかりですよね」(Aさん)
部長の執拗なセクハラ
労働者派遣法(派遣法)が施行されたのは、今からちょうど30年前の1986年。当初は、「専門知識を生かして自由な働き方ができる」として働く側からも歓迎された派遣社員だが、企業側からは契約期間終了で「雇い止め」にできることから、人手不足のときだけ一時的に雇える「雇用の調整弁」として扱われるようになった。その間、勤め先の倒産やリストラなどで正社員の地位を追われたり、親の介護のため仕事を辞めたりする中高年の失業者が増加。そうした人たちが働き先を求め、派遣市場に流れ込んだ。
総務省の労働力調査によれば、中高年(45~64歳)の派遣社員の数は2014年平均で34万人と、04年の2.4倍に膨らんだ。約119万人いる派遣社員の3割近くを占めるに至っている。
だがその現実は厳しい。40歳を過ぎると仕事は極端に減り、職種はキャリアを問わない単純労働ばかりになる。提示される時給も、低くなる一方だ。現場では、派遣社員の経験やスキルばかりか、人格すら軽視した事態が広がっている。
都内の大手飲料メーカーで、一般事務の派遣社員として働いていた女性Bさん(41)は、50代後半の男性部長から、たび重なるセクハラを受けた。14年8月から働き始め、翌15年1月に別の部署の仕事も兼任することになった。セクハラをしてきたのは、兼任先の部長だ。
懇親会の席で、部長はBさんの年齢や結婚歴はおろか、夫婦生活にまで言及し、
「子づくり、がんばりなさい。年齢的にもあと1年くらい大丈夫だろう!」
と言い放った。隣に座っていた男性社員には、
「なあ、子づくり教えてやれ!」
などと、お開きまで2時間近く繰り返した。部長は勤務中も、
「ご主人と、年に数回は、ねえ?」
など性生活を示唆する質問をしつこく続けた。
「不妊と絡んでいるので、私の中では笑って聞き流すことのできない話でした」(Bさん)