栃木・宇都宮に「LRT」が走る日は来るのか 路面電車に大規模投資、増える自治体負担

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基本方針策定時に決まった全体計画区間

2012年の市長選の結果を受けて宇都宮市は、2013年に「東西基幹公共交通の実現に向けた基本方針」を策定。JR宇都宮駅東側の優先整備、東隣の芳賀町までの延伸などを明示した。同時に自治体(宇都宮市、芳賀町)が走行空間などを整備・保有し、民間の営業主体が運行・維持管理を行う「公設型上下分離方式」の採用も決めた。

建設にかかる事業費は、市長選前に383億円(JR宇都宮駅東側260億円+西側123億円)という数字を出している。同じ区間をBRT(バス高速輸送システム)で整備した場合(約160億円)に比べて2倍以上になる。

しかし広島市が1994年に開業したAGT(新交通システム)アストラムラインは18.4キロメートルに約1744億円を費やしており、地上を走るLRTは他の軌道系交通よりは安価に済むことが分かる。

駅東側の事業費は当初計画の5割増し

ところが2014年、宇都宮市は朝夕の需要増に伴う車両増、交差点周辺の交通円滑化のためのルートを見直し、時間短縮を促す快速列車の導入などを理由に、駅東側の事業費をそれまでの約260億円から約406億円へと大幅に上方修正した。うち半分が国、残り半分が市の支出になる。

営業主体に応募した唯一の関東自動車が運営するバス

さらに今年6月に営業主体を公募したところ、応募したのは宇都宮市を本拠に置くバス会社の関東自動車のみだった。結局、宇都宮市と芳賀町は翌7月、営業主体を行政51%(宇都宮市40.8+芳賀町10.2%)、関東自動車などからなる民間49%の出資とする第3セクターに改め、決定した。資本金は1.5億円。市の出資は6120万円となる。

以前から宇都宮市には、膨大な事業費を理由にLRT導入への反対意見があった。市長選では推進派候補が当選しているのですでに民意は決しているが、その後事業費の増加や営業主体の第3セクター化などが決まり、市の支出が膨らみ続けている。

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