橋下市長が描いた「大阪都営地下鉄」の全貌 鉄道マニアには興味深すぎる路線構想

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地下鉄今里筋線の延伸の是非も大阪市議会与野党の論戦となった
前回の記事では、橋下徹・大阪市長の「大阪都鉄道構想」とは何だったのかについて触れた。今回はこの構想をめぐる動きを振り返ってみたい。

橋下大阪維新の会は、2011年に大阪市長選と府知事選で勝利した後、快進撃を続ける。躍進のキーワードは、大阪府と大阪市を再編する大阪都構想だ。

橋下市長は「都構想は大阪の成長戦略を実現する『手段』である」と語り、「二重行政の解消」と「既得権益の打破」を目指すと意気込んだ。市1.8兆円、府3.9兆円の一般会計予算を統合することで、効率的かつ戦略的な行政運営が可能となると訴えたのである。

ただ、突然そんな私案を披露されても、大阪市民も大阪府民も、自分たちと何の関係があるのか、今ひとつ理解できない。

そこで橋下市長は、都構想の象徴的政策として、大阪市営地下鉄の完全民営化を提案する。経営合理化と「交通インフラ整備の一元化」を図ることで「私鉄との相互乗入、乗換を推進し、利便性を高めるとともに、運賃の値下げを行います」と訴えた。

6000億円の事業価値があるとされた地下鉄事業を民営化することで、何を目指そうとしたのか。市長就任以来の動きを振り返っていきたい。

「大阪都構想」の象徴だった地下鉄民営化

市営地下鉄を運営する大阪市交通局の経営形態を巡る議論は以前からあった。関淳一元大阪市長は2007年に民営化を示唆した発言をしたが、市職員や市議の反発もあり、具体論に踏み込むことはなかった。

橋下市長は、2012年4月、京阪電気鉄道出身の藤本昌信氏を交通局長に就任させる。同年12月には、「地下鉄事業民営化基本方針(素案)」をまとめ、2015年をメドに地下鉄民営化を実現させる方針を決めた。当面、大阪市100%出資の株式会社とし、将来の株式上場、完全民営化を目指す、とした。「大阪都構想」が実現した暁には、市所有の株式を特別区の保有資産にしたいとの方針を示す。

民営化されると、公務員の数も賃金も削減できるし、トイレの改修などサービス改善も進む。「関西に超優良株式会社が誕生し、東京メトロのようにサービス向上が必至」と訴えた。2013年の朝日新聞の世論調査(大阪府民対象)で民営化賛成55%、読売新聞で賛成66%と反対を大幅に上回る数字が出た。

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