保険に潜む確率論、くれぐれもご注意を! 日本人は歴史的に確率論に弱いのか?

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保険で使われる「お祝い金」や「ボーナス金」にも落とし穴があります。ネーミングからして、その間、元気でいたことに対する保険会社からの「プレゼント」と考えがちです。しかし、元気でいた人が多かったりした場合に返却される「プレゼント」は、実は「配当金」という名目で支払われるものです。だから死亡数の多寡によって配当金はいつも変動します。払われないこともあります。

一方で、「お祝い金」や「ボーナス金」は、自分でその分多く払った保険料の一部が後から返却されてくるものなので、必ず支払われます。一見似ているので、「お祝い金」と「配当金」を混同して、本当に保険会社が祝ってくれている、と勘違いしている人も多いでしょう。

前述の「ギャンブラーの誤謬」は、なまじ大数の法則を知っているがために起こります。ルーレットの色の出る確率が50%であるという先入観にとらわれ、赤が5回も続くと「そろそろ黒が出るぞ」とつい勘違いしてしまうのです。中途半端に理解したつもりでいると、かえって勘違いの「落とし穴」に落ちてしまうことがあるのです。

保険に潜む確率論にはくれぐれもご注意を!

確率論の世界は味気ない無機質な経済合理性の世界だ、と感じる人は多いと思います。人間はそもそも不合理な生き物ですから、必ずしも合理的に行動する必要などありません。確率などあまり考えず、感覚的に判断し、情緒的に生きることのほうが人間らしいでしょう。そのほうが幸福感も大きいかもしれません。しかし、宝くじのように、何事も程度の問題です。あまりに非合理な、度を越した買い方はお勧めできるものではありません。

保険にも同じことが言えます。「若いうちに入ると保険料は安い」とか「保険は元気で無事故でいると保険料が一部返ってくる」という確率的には正しい保険知識が、かえって勘違いを引き起こすことが多いのです。保険は通常、支払期間がとても長い商品です。何十年も払い続けます。だからこそ、ずっと宝くじを買い続けるのと同じようなことにならないように気を付けたほうがよいのです。

確率論は馴染みにくいもので、数字嫌いの人は特に苦手に感じてしまうでしょう。そのうえ、中途半端に分かったつもりでいると勘違いの落とし穴が潜んでいます。

保険に入る時には、このことに十分注意して、何度も冷静に考えてから入りましょう。それでも、どうも分からない、自信がない、と感じるのであれば、取りあえず加入を見送るのが賢明です。
古来「分からないものには近づかない」のが賢人たちの教えです。

橋爪 健人 保険を知り尽くした男

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はしづめたけと / Taketo Hashizume

1974年東北大学卒、1984年米国デューク大学修士。日本生命保険に入社後、ホールセール企画部門、米国留学、法人営業部門を経て米国日本生命副社長。帰国後、損保会社出向、ジャパン・アフィニティ(保険ブローカー会社)代表取締役を経て2004年独立。企業向け保険ビジネスのコンサルタントとして活動。著書に『日本人が保険で大損する仕組み』(日本経済新聞出版社)

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