「発達障害の子ども」に世界はどう見えているのか 「家・学校・社会」の3シーンから当事者の知覚世界をひもとく

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余談になりますが、ASDの子どもたちがコンピュータと相性が良いと言われるのは「心の理論」の問題と関係があると思います。コンピュータは傷つきませんし、何かを求めてくることもありません。こちらのペース、指示に応じて反応してくれます。

そのため、ASDの子どもたちにとっては、生身の人間よりも快適なコミュニケーションの相手である可能性が高いのです。

LDの子どもたちが「家」で見ている世界

LDの代表的なものとして、読字障害、書字障害、算数障害の3つが挙げられます。

読字障害は、単語のまとまりから1つの単語を識別したり、1つの単語の中の音素を識別したりすることが困難な症状で、「読み」にかなりの時間がかかります。英語では「Dyslexia(以下、ディスレクシア)」と書き、日本語で「失読症」と訳されることがあります。

書字障害は、文字や文章を書く際に困難が生じる症状です。英語では「Dysgraphia(ディスグラフィア)」と書きます。

算数障害は、計算や推論が困難な症状です。いずれも、「全体的な発達には遅れがないのに」という大前提がつきます。英語では「Dyscalculia(ディスカリキュリア)」と表記します。

では、LDのお子さんたちは「世界」をどのように見ているのでしょうか?個人差があるということを前提に解説していきます。

〈読字障害のお子さんが見ている「世界」〉

読字障害のお子さんの場合、

「文字がゆがんで見えたり、重なって見えたりする」
「似た文字を区別することが苦手」
「文中の語句や行を抜かしたり、繰り返し読んだりする」
「読み間違いが多い」
「漢字の意味はわかるのに読めない」
「単語や文節の区切りがよくわからない」
「単語のまとまりがわからない」
「音読すると意味がわからなくなってしまう」
「読み方がたどたどしい」
「勝手な読み方をする」

などといった「世界」を生きています。

読むとは、文字を認識して音と結びつけ、いくつかの文字のつながりを単語として認識し、理解する行為です。このプロセスのどこかでつまずいているために、読字障害が起こっています。

ですから、お子さんに対して周囲の大人は、

・プロセスのどの段階でつまずいているのか?

・そのとき「世界」がどんなふうに見えているのか?

を正確にヒアリングし、対処していくことが求められます。

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