「発達障害の子ども」に世界はどう見えているのか 「家・学校・社会」の3シーンから当事者の知覚世界をひもとく

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こういった〝マイルール〟に関連する現象として、感覚過敏の症状が挙げられます(その一方で頻度は少ないですが、感覚鈍麻が見られることもあります)。

視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚……五感のどこで感覚過敏が起こるか、1つだけなのか複数あるのか、どの程度の過敏なのか、などは一人ひとり異なります。

聴覚過敏の場合では、「ちょっとでも雑音が聞こえると辛くてしかたない」というお子さんがいます。イヤーマフ(耳全体を覆うタイプの防音保護具)で外部の音を遮断している姿も、街中でときおり見かけます。

また、触覚過敏の場合であれば、「洋服についているタグが気になってしまう」というお子さんがいます。親御さんは、洋服を入手するたびにタグを切って対処するわけです。他の感覚においても、さまざまな過敏さを示すことがあります。

「○○がイヤだ」と周囲に伝えられる子もいますが、ASDのお子さんの中には「感覚過敏に悩んでいるけど、悩みについて周囲にうまく伝えられない」という子も一定数います。

診療の過程でお子さんが感覚過敏であったことがわかり、「そこまで問題だとは思っていませんでした。すごくおとなしくて、今まで何も訴えることがなかったので」という親御さんもいらっしゃいます。

ASDが抱える「心の理論」の問題

気持ちの理解――これを心理学で「心の理論」という用語で表現することがあります。

私たちは普段「この人は今こう思っているはずだ」とか、「私がこう言ったら相手はこう思うだろう」といったことを直感的に理解しながら生活しています。

このように、「他人の考えを推測したり、意図や感情を理解する能力」を「心の理論」と呼んでいます。

ASDの子どもたちが人とうまく関われなかったり、社会でうまく立ち回れなかったりするのは、「心の理論」に問題がある、あるいは未発達であるからではないかと考えられています。

たとえば家庭内であれば、家族の気持ちを逆なでするようなひと言を口にすることがあるかもしれません。それは「自分の言ったことが相手にどう受け取られるか?」を想像することができないからです。本人に悪気があったり、相手を傷つけてやろうという意図はないのです。

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