ジョセフ・サミュエル・ナイ・ジュニア氏は、ハーバード大学特別功労教授で同大学ケネディ政治学大学院の元学長。同氏は国際安全保障問題担当国防次官補、国家情報会議議長、安全保障援助・科学技術担当次官代理などの要職を歴任してきた。
最近の著書 『Is the American Century Over? (米国の世紀は終わったのか)』はペーパーバックで発売されており、。ナイ教授は4月27日 、ハーバード大学ケネディ政治学大学院で行われたフォーラムにおいて、日本の安倍晋三首相を迎えるために尽力した。
同氏には東アジアの「リバランス政策」を中心に話を聞いた。インタビューの最後では沖縄普天間飛行場の辺野古移転問題に関して、個人的見解と断りながらも、きわめて重要な提案を行った。同氏はクリントン政権における国防次官補として、普天間飛行場返還の日米合意を主導した人物である。
米国は多くの国と協力をする必要がある
──『Is the American Century Over? (米国の世紀は終わったのか?)』のなかで、米国は当分の間、世界の超大国であり続けるが、国力の拡散のために他国を管理する米国の能力はかなり弱まるだろうと主張している。
そのとおり。エントロピー(編集部注:世界における各種の力学)は、中国の役割ではなく、米国の役割に対して、より大きなチャレンジになるだろう。つまり、米国が物事を成し遂げるために中国と協力する場面が生じるということだ。
例えば、アジアインフラ投資銀行 (AIIB) は、米国が反対しなければならないようなものではない。中国が世界に公益をもたらす役割をいくらか果たすようになると希望を持つべきだ。他国が参加することにより、AIIBが中国の不正政治資金となることが防がれ、透明性と組織性を持たざるを得なくなる。
AIIB問題は米国が行うべき判断についてよい見本を提供している。すなわち、米国は超大国であり続けるが、中国だけでなく他国ともっと協力することを学ばなければならないということだ。たとえば地球の気候変動の問題を2カ国だけで解決することはできない。世界の通貨安定は2カ国だけで得られない。欧州や日本、その他の国のことを考えなければ何もできない。そのためには、外交政策について、今までたびたび行ってきたようなゼロサム的なやり方を捨てる必要がある。
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