ナイ教授「辺野古移転を強行すべきではない」 日本列島各地への分散配置を検討せよ

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東アジアでは、対照的に米国の存在感を強く示すことが必要だ。それこそが「リバランス」政策だ。東アジアは米国の存在を歓迎している。つまりベトナム、フィリピン、日本、インド、オーストラリアのことだ。これらの国は、中国の力の強まりに対抗するうえで米国の助けを望んでいる。それは抑圧ではない。中国の力が強まるなかで、自然な勢力の均衡を確保するためのものだ。

オバマ大統領は正しい方向に歩んでいる

 ──オバマ大統領は弱々しくみえるとの批判がある。

東アジアで進めているリバランスは正しい政策だ。オバマ政権に対しては、中東で問題が次々と持ち上がった。そのため、政府高官らの渡航記録をみても、それほどリバランスが進んでいないようにみえる。緊急事項が重要事項を押しのけている状態といえる。

欧州においては、オバマ大統領が、プーチン大統領が進めた欧州から米国を引き離す政策を許さなかったことは正しかった。それがロシアの主要な目的だったためだ。オバマ大統領がドイツのメルケル首相と緊密な関係を維持したことは非常に賢明だったといえる。また、中南米ではキューバに対して門戸を開く政策をとったことも賢明だった。イランに関しては、核問題の交渉がどうなるか6月になるまで分からないが、これらは全部正しい方向への歩みだ。全体としては、オバマ大統領は正しい方向に歩んでいる。

──重要事項である東アジアのリバランスを進める上でのカギは何か。

重要な問題の1つに、環太平洋戦略的経済連携協定 (TPP) が成功するかどうかがある。貿易協定の詳細について文句をいうことはできるが、私は貿易の専門家ではない。TPPが失敗すれば、リバランス政策における米国の大きな失敗とみられるだろう。米国と日本の間の交渉が合意に近づいている兆しがあるが、どうなるかは最後まで分からない。

重要な問題においては中国と協力する方法も見つけなければならない。オバマ大統領はそれを見つけようとした。昨年末の訪中で合意に達した気候変動に関する声明は有益だった。大事件でないにしても有益な前進だ。AIIBに関しては、もっとうまいアプローチを考えなければならない。

米日の軍事関係は、ここ数年よりも良好になっている。20年前に国防総省にいたころ、みな日本との安全保障条約を冷戦時代の遺物と考えていた。今では誰もそうは考えていない。インドと米国の関係は健全な方向に進んできている。したがって、リバランスの全般的な方向は間違っていない。しかし、私の期待よりゆっくりと進行している。

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