巨人原監督の"朝令暮改"は非難されるべきか 会社ではブレない上司が人気だが野球では?

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今後、現場の社員たちも

「先月の社長の発言、あれは反故になったから」

などと上司から告げられることが、ますます増えるはず。その発言に対して「どうしてコロコロ変わるの?」ではなく、「すばらしい大英断」とたたえるくらいの覚悟が必要ではないでしょうか。こうなると、社員たちは上司から聞いた経営方針などいつ変わってもおかいくないものであって、一度聞いた言葉を信じて盲目的に仕事に取り組むというのではなく、

《これから起きる変化は何か? それに合わせて、どのような行動が期待されるのか?》

をつねに予測する力を備えておくべきでしょう。

ただし、“Why”の朝令暮改には気をつけよう

また、朝令暮改についてはふたパターンあることを覚えおくべきと思います。

ひとつ目はWhyの朝令暮改

ふたつ目はWhatの朝令暮改

そもそもWhatレベルの朝令暮改は当然あるもの。環境変化に実現手段をその場の状況に合わせて変更させていく、それだけです。いわゆる「軸はブレていない」とも言えます。軸がブレなければ、その場その場で最適の手段に柔軟に対応していくというのは、どんな状況であってもむしろ好ましいことではないでしょうか。むしろここで、妙に「前と同じやり方でやるべき」といってひとつのやり方に固執するのは、百害あって一利なしと言えるでしょう。

ところがWhyレベルの朝令暮改となると、ビジョンとか哲学の変更ですから、「軸がブレている」と思われても致し方ありません。同じ朝令暮改でも、軸までブレるのかorブレないのかで、部下たちの受け止め方は大きく違います。軸を変更するくらいの場合には「さすがに」コンセンサスを取ること、説明責任を果たすことに時間を割くべきでしょう。いくら環境変化が激しいからといって、乱暴に事を進めて部下に不信感を持たれては、元も子もありません。

ジャイアンツで阿部選手が捕手に戻るのも、目先は当然、必要なことだとしても、「本来、目指すチームづくり」のためには一時的なものであるべきでしょう。これが、長く続いて「一塁コンバート中止」となると、軸のブレたWhyレベルの朝令暮改と周囲がとらえて、監督に対しする選手やファンの信頼が、大幅に減少することになるでしょう。今後、原監督がどういう采配をするか、引き続き注目していきたいと思います。

 

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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