尖閣諸島の緊張は、むしろ高まっている

マイケル・グリーン氏に聞く日中関係の今後

――北京で行われた安倍首相と習近平国家主席の首脳会談の成果をどう評価するか。

会談によっても、日中関係の緊張の根本的な原因は解決していない。だが、外交上の駆け引きは巧妙に行われたと思う。日本政府は中国の体制全体に対し、「交渉の扉は開けてある」という重要なシグナルを提示した。

少なくともここ2年間、中国とのあらゆる交渉が凍結していた。 例えば、信頼を醸成するための軍同士の会談は今も保留状態だ。中国政府の幹部たちも訪日しようとせず、地方長官や中国共産党の上役たちも日本の担当者と会合を持ちたがらない。企業リーダーにも同じことが言える。どの組織も、リーダーは代理人を送って会合に出席する形を取ってきた。上層部の人たちは政府からの懲罰を受けたくないからだ。

マイケル・グリーン(Michael Jonathan Green)●戦略国際問題研究所(CSIS)アジア日本会議上級副議長、ジョージタウン大学エドモンド・ウォルシュ・フォリン・サービス校准教授。2001~2005年には国家安全保障会議(NSC)スタッフを務めた(写真はCSISのホームページより)。

日本に対してどこまで強硬姿勢を取るべきか、その加減が分からないので、指揮系統トップの人間の怒りを買うような危険を冒したくなかったわけだ。

今回の日中首脳会談は、APEC開催国としての主導権を利用して、2年前に凍結したままの日本との海上問題における信用醸成のための会談など、組織上層部レベルでの交渉を再開できる可能性をつくった。また地方長官にとっては、日本からの直接投資を導き入れるチャンスが生まれた。

そしておそらく、この会談は日中韓三国自由貿易協定への布石ともなるものだった。必ずしもすぐに推進されるという意味ではないが、今回の日中首脳会談で、中国における各界の責任者たちが日本の担当者との交渉機会を得ることにつながっていく。これは、日本がまさに望んでいることだ。

難航したのは効果的だった

――会談が開かれるまでの道のりは難航したようだ。

それも効果的な策だったと思う。中国側の前提条件は、外交会談でも持ち出されたが、安倍首相が靖国神社に参拝しないことを確約することと、尖閣諸島の領有権問題に関する議論の存在を確認することだった。

安倍首相はどちらの条件も飲むつもりはなかった。政治的に考えても、安倍首相が靖国参拝をやめる確約はするはずがない。安倍首相なのだから当然だ。

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