中国が日中首脳会談を決断した3つの理由 自民党と中国共産党のパイプ復活が焦点

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11月15,16日にオーストラリアのブリスベンで開かれたG20サミットでも、日本の安倍首相と中国の習近平国家主席は顔を合わせた(写真:ロイター/アフロ)
11月10日、中国北京で開かれたASEAN首脳会議の場で、安倍首相と習近平国家主席による初のトップ会談が行われた。この会談の背景と意義について、専門家はどのように見ているのか。オーストラリア出身の日本の安全保障政策専門家であるコリー・ウォレス氏にコメントを求めた。

 

――安倍・習会談は日中関係の打開を意味しているか。

2010年以来日中関係を特徴づけてきた張り詰めた緊張関係の一時的なトーンダウンを意味していると考えている。両国の首脳陣によって新たなコネクションとビジネス上の関係が進展する可能性がある。今回の会談は、両国の当局者及びビジネス界がこのような関係を再構築するためのお膳立てである。

この関係がより長期にわたって継続可能なデタントに変化するかどうかは多くの要因に依存する。ただ、私は両者が和解したとみなすには慎重である。つまり現在のところより親密な和解への道筋が全く示されていない。

「1回目は他人でも2回目は友人」

コリー・ウォレス(Corey Wallace)●オーストラリア国立大学 (ANU)、豪日研究センター (AJRC) における日本の安全保障政策の専門家。ニュージーランドのオークランド大学においてアジア太平洋地域における国際関係論の講義を行い、この大学で日本の安全保障政策の一般的な変化と発展をテーマにPhDを取得した。日本で研究生活を送りながら民主党所属国会議員のスタッフとして勤務したこともある。

――首脳会談に先立ち両国が個別に出した合意文書により、両国とも「勝利」を主張することが可能になったが、同時に不和の継続も浮き彫りになった。

その通りである。合意文書を「同時に」発表するという方法は異例だが不可欠なことだったのかもしれない。中国政府の船は短期間一時的に尖閣諸島海域とその接続水域から立ち退くかもしれないが、それは中国が必ず船の数を減らすことを約束しているものではない。主権についてあるいは法的な紛争の有無についてすら、日本政府の立場は実質的に少しも変化していない。

中国は安倍首相から靖国参拝を行わないという主旨の約束をなんとか引き出そうとしていたようだ。安倍首相は実際に日本の全国放送のテレビ番組において、習主席が「初めて会ったときは他人でも、2回目からは友人になる」という主旨の興味深い発言をしたことをほのめかした。

これは、安倍首相が靖国参拝を控えることができた場合に、習主席との2度目の会談が実現するかもしれないということを示唆しており、それが実現すれば和解に向けたより強固な道筋を示すことになるだろう。彼は次回の握手の際に笑顔を見せるかもしれない。

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