なぜインドのトイレ普及率は5割以下なのか

モディ改革を支える「トイレの聖人」

スラブアカデミーを訪ねた日本人技術者にあいさつする、「トイレの聖人」パタック博士(左)

8月30日、インドのモディ首相が来日する。モディ氏が8月15日に独立68周年記念式典での演説で、多くの時間をトイレの普及計画に割いたことは国際的に注目された。だが、その背景に、インドの社会改革、経済発展へ向けた命がけの意志とメッセージが込められていることは、どれだけ理解されているだろうか。

なぜインドでは、トイレが普及していないのか

そのことを説明するために、ビンデシュワル・パタック博士(写真)のことをご紹介したい。インドでは子どもでも知っている、「トイレの聖人」と呼ぶべき人物である。だが、なぜかインドでビジネスをしている日本人の間では、パタック博士を知る人が少ないようだ。

パタック博士の話をする前に、なぜインドでトイレが普及してこなかったかについて解説したい。日本人や、他の外国人からは見えにくい重要な背景があるからだ。

インドではトイレを設置せずに屋外で排泄することが、都市、農村を問わず一般的であった。このためトイレの普及には衛生教育の徹底、またその基盤となる初等教育の徹底と質の向上が必要となる。

インドでは、トイレの普及に必要な条件はそれだけではない。人々が屋外に排泄した物は、モヘンジョダロ(インダス文明の都市遺跡)の時代から、アンタッチャブル(不可触民)の階層の人々が、手で処分をしてきたという事情があるからだ。これらの人々はスカベンジャー(死肉喰い)と呼ばれ、彼らは排泄物の処理に対する代償で生計を立てている。インドにおけるごみの廃棄・処理の問題も同じ構造である。

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