若者の半数「余暇をイオンモールで過ごす」
――阿部真大さんは『地方にこもる若者たち』の中で、地方の若者とイオンモールの関係について論じています。そこに注目したきっかけは?
岡山の大学にいる先輩と一緒に、若者の価値観に関する調査を始めたのですが、その際に地方の若者たちの中でイオンモールの占める存在感の大きさに気づいたのです。
若者たちに「余暇を過ごす場所」を質問したところ、半数が「イオンモール」と答えた。岡山で調査したので、これはイオンモール倉敷を指します。イオンモール以外のショッピングセンターや複合レジャー施設を含めると、実に4人に3人が「イオン的な場所」で過ごしていました。
――レジャー施設が少ないから、イオンモールしか行くところがない、という意味でしょうか。
いや、東京から見ると、イオンモールだけドーンと突出しているように見えますが、イオンモールは中心にあるもので、言ってみれば天守閣。その周りに城下町が広がっているようなイメージなのです。
彼らの話を聞いてみると、たとえば、家から1時間、2時間かけて車でイオンモールに行って、そこに行くまでの間、ドライブを楽しみ、イオンモールで買い物をして、またどこかのファミレスに行ってご飯を食べて、途中の展望台のようなところで休んで、ラウンドワンに行って、ゲオに寄って……と、商業施設がいくつか組み合わさって、ひとつの大きな商業圏を形成している。
1990年代後半から2000年代に、地方に続々と商業施設ができました。かなり田舎のほうにもショッピングセンター的なところはありますが、それは小さくてあまり輝いてない店だったりする。日常生活はそういう店で済ませて、週末にイオンモールに行く。彼らの消費生活の中で、いろいろな商業施設のランキングがあり、その頂点に位置するのが、イオンモールなわけです。
――頂点。確かにイオンモールに行けば、買い物も食事もできて、映画も見られて、一日中、楽しめます。
まあ、ディズニーランドみたいなものですね。僕は岐阜の出身で、1995年に大学進学のために東京に出てきて、地方がすごく変わったことに気づきませんでした。今は岐阜にも巨大なショッピングモールがいくつかありますが、その頃はまだなかった。僕が東京にいる数年の間に地方が劇的に変わり、東京だけ取り残されていたのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら