地方が自立しないと、日本はポンコツになる

国にNO!を突き付けた岡山県総社市長の戦い(下)

 「政治」というと、「難しそう」「私には関係ない」「偉い人がなんとかしれくれる」と敬遠してしまいがち。しかし、今まで目を向けてこなかっただけで、当たり前だけれど、政治と私たちの生活はつながっている。経営ストラテジストで作家、そして1児の母でもある坂之上洋子さんが、「あまり知られていないけれど、実はいい政策」をフューチャーし、ビジネス目線、ママ目線、NPO目線で、素朴な疑問を明らかにしていく。
 第1回目は、岡山県総社市長を務める、片岡聡一さん。

※前編はこちら:障がい者が自立すれば、みんなが元気になれる

日本の原風景は人口10万人以下のスモールシティ

坂之上:「地域が自立しろ」というお話ですが、市長は、政府に「市の職員の給料を下げろ」と言われたとき、全国で1人だけ「俺は下げない!」と反発しましたよね。これはすごいと思って(笑)。この戦いは、もう終わったんですか?

片岡:国がペナルティを科すらしいです。

坂之上:どういうペナルティですか?

片岡:おそらく、国がうちの市にくれる交付税の額を下げるんだと思います。でもそれは通らない話ですよ。税金というのは、僕らが市民から集めて、それを国に納める仕組みです。それを国は、市や地方に還元しないといけない。しかも、僕ら市長には、職員の給料を上げ下げしていい、れっきとした権利がある。それを奪うのはおかしいと思います。

坂之上:片岡さんは、市を黒字にするためにいろんな努力をしていますよね。職員も頑張ってせっかく黒字にしているのに、どうして上から言われて彼らの給与を下げなくちゃいけないんだ、と?

片岡:そういうことです。僕は、これからは地方の時代になると思っています。地方主権にしないと、この国は外国と戦っていけなくなる。それに逆行して国が上から押さえつけてはならない。僕はずっと橋本総理の秘書をやっていて、そのとき、中央から地方の首長たちを見ていました。そのときの地方の首長たちが、今の僕の反面教師になっているんです。だって地方の首長さんって陳情にしか来ないんですよ。

坂之上:陳情ばかりというのは?

片岡:予算を上げてくれとか、これがほしいとかお願いばっかり。口を開けて、何かくれるのを待っているだけなんですよ。そうじゃなくて、自分たちの足で立ち上がって、地方から変えたいという首長がいてもいいのにな、と当時から思っていたのです。

なんてったって国民は霞が関に来ないんです。だって、街に普通に住んでいる市民や、総社市の職員が「予算をどうにかしてくれ」って、財務省に行っても門前払いでしょう。政策なんて決まるまで遅いし、やった効果だってなかなか見えづらい。霞が関から見ていて感じたのは、国で決めたことが地方に届くまでめちゃくちゃ遅いということ。国の大きさだから動きが遅いのはしょうがないところもあるんですけど、とはいえ、地方に届くまでだらだら待っていないで、もうちょっと地方が立ち上がってくれたらいいのにと思っていたのです。

総社市はだいたい人口6万8000人です。全国には813の市があって、そのうち、僕らみたいに人口10万人以下で、中山間地域(山間部と平野部のちょうど中間に位置し、平地に比べて傾斜が急で、まとまった農地も少ない地域)を抱えている市は521もあるんです。813分の521ってたぶん65%ぐらいなんですよ。その521団体の人口をぜんぶ足すと、実は日本の全人口の55%ぐらいになります。

ということは横浜市の370万とか、大阪市の270万とか、ああいうビッグシティはそもそも日本の原風景ではないということなんです。日本って、僕らみたいに山間部と平野部を両方抱えた小さな集合体がほとんど。数のうえでも、マジョリティは実は僕らなんですね。

でもね、同時に、いちばん自主性に欠けるのも僕らなんです。だから、やっぱり僕らが立ち上がって、徹底的に、自立した地域をつくっていかなきゃいけない。それが僕の役割だと思っています。

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