地方が自立しないと、日本はポンコツになる 国にNO!を突き付けた岡山県総社市長の戦い(下)

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繰り越しOK、市民が考える1000万円の使い道

坂之上:自立する地方が、新しい日本をつくる。

片岡:そうです。

坂之上:主体性の話で、もうひとつ私がものすごくびっくりしたのが、学校ごとに予算を自由に使ってもらうということ。これ、ものすごく珍しくないですか?

片岡:かなり珍しいと思います。

片岡聡一(かたおか・そういち) 岡山県総社市長 1959年生まれ。青山学院大学法学部 卒。1984年、橋本龍太郎事務所入所。内閣総理大臣公設第一秘書、行政改革・沖縄北方担当大臣大臣秘書官(内閣府へ勤務)などを経て、2007年、総社市長に当選。

坂之上:具体的にどういうことをされているのか、お教えいただけますか。

片岡:この行政区には1000万、こっちの行政区には1200万って、区域ごとにひとまとめにがばっと渡して、使い道はご自由にというものです。

坂之上:それぞれの行政区に予算を1000万円お渡しして、自分たちに必要なことをちゃんと考えて、自分たちの裁量で使いなさいという形なんですね。普通は多分、予算を書いて、これにいくらください、ここの道路を修繕したいです、ここは木を植えたいです、と内訳を出しますよね。それを見て市役所がOKです、NOですって言うんですよね?

片岡:逆に全部「ヒモ」がついているか。

坂之上:「ヒモ」?

片岡:住んでいる人たちをあまりにも信用してなくて、国や県や市が、使い道を全部指定してしまうわけです。これは街路灯の電球を替えるおカネだとか、これは道路の補修だとか。これは道の草刈り費用だとか。それをずっとやっていたら、住んでいる人たちは発想しないままだし、おカネの分捕り合戦みたいなことにもなってしまう。

坂之上:この道路をつくるために予算をつけましたって最初に決めたら、地元の人たちが、「本当は道路なんていらなくて、こっちでぼうぼうになっている草を刈りたい」と思っても、フレキシブルに変えることはできなかったわけですよね。だけど、市長のこのやり方なら、ここは安く済んだから、そのかわりに、地域のここをもっとよくしようとかって現場で考えて、必要なことに自由に使えるっていうことですよね? 人の裁量が細やかに行き届く。

片岡:そうです。ご自由にどうぞと。やり方によっては、お渡しした予算を2~3年貯めて、地域の公会堂みたいなのを建ててもいいし。ちなみに、学校にも同じような一括交付金制度を導入したんですよ。校長が自由に使い道を考えて、それを教育委員の前でプレゼンしてね。それを審査して、選ばれた学校に配分するというシステムです。

坂之上:そこまで自由なんですね。

片岡:もう、自由です。繰り越しOKですしね。

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