困っている人をたらい回しにしたくない

寝たきりを経験した長野県知事だから、見えたこと(上)

  「政治」というと、「難しそう」「私には関係ない」「偉い人がなんとかしれくれる」と敬遠してしまいがち。しかし、今まで目を向けてこなかっただけで、当たり前だけれど、政治と私たちの生活はつながっている。経営ストラテジストで作家、そして1児の母でもある坂之上洋子さんが、「あまり知られていないけれど、実はいい政策」をフューチャーし、ビジネス目線、ママ目線、NPO目線で、素朴な疑問を明らかにしていく。第2回目は、長野県知事の阿部守一氏。

複雑な問題を包むようにサポートする

坂之上:阿部さんが、知事になられて、これはどうしてもやりたいと取り組まれたことは、何ですか?

阿部:いちばんは「ながのパーソナル・サポートセンター」でしょうか。

坂之上:パーソナル・サポートセンター?

阿部:これは生活するのに困っている方や働く場がない方、あるいは病気とか、複雑に絡み合ったいろんな事情を抱えている方々を、全面的にサポートする仕組みです。

坂之上:生活が困難になっていらっしゃる方々の事情は、ひとつではなく、それぞれ複雑に絡んでいることが多いですよね。公的なサポートを受けたり、働いたりしたいのだけど、配偶者の暴力で逃げてきたから住所も言いたくない、とか。

阿部:はい。ほんとうは、そういう方にこそ安心して相談してもらいたいんです。だからここでは、生活保護の相談や、健康とか借金とか、生きていく中で困ったことがあったら、いつでも相談してくださいねっていうスタンスで、県民の困り事を一手に引き受けています。社会福祉士やキャリアコンサルタントにも常駐してもらって。こういう場所を、県内4カ所に作りました。

坂之上:え、普通は、役所に相談に行ったら、たらい回しになってしまった、なんていう話をよく聞くのですが、そういうことがないという意味ですか?

阿部:そうなんです。役所は、部署ごとに担当する仕事が決まりきっていて、いわゆる「縦割り」になっていますからね。でもパーソナル・サポートセンターでは、たらい回しにはしないで、一緒になって市役所の担当窓口に行ったり、就職するにはどうしたらいいか共に考えたりして、人々に寄り添っていこうとしています。

坂之上:本当に食べるものがないくらい困っていても、役所に行くと嫌みを言われて追い返されてしまうとか、自己責任だと言われてしまって、協力的でないケースが全国でたくさんあると言われている中で、そこまでケアしてくださるのって、珍しいのではないですか?

阿部:そうだと思います。これからもっと、この取り組みを拡大したいと思っています。

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