長期金利、望みもしない過剰な低金利に? 市場動向を読む(債券・金利)

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日銀の「異次元緩和」導入以降、日本の国債市場は「管理相場」の様相(撮影:今井 康一)

米国債金利は、9月上旬に10年債で3%まで上昇した後、9月末には一時2.5%をつけるところまで低下してきた。直接的な要因としては、「サマーズ元財務長官がFRB議長の指名を辞退したこと」「FOMCにおいて量的緩和の縮小開始が見送られたこと」という2つのサプライズが大きかった。この先の展開を考えるうえでは、そもそも米債金利が9月上旬に3%まで上昇してくるプロセスにおいて、2つの異なった要因が長期金利を押し上げてきたことを正確に認識しておく必要があろう。

「質への逃避」剥落で米金利上昇

ひとつめの要因は、欧州債務危機による「質への逃避」プレミアムの剥落である。これは、米金利市場における長めのフォワード金利(将来時点を起点とする金利)の上昇という形でより強く表れているようだ。

一般的に、長めのフォワード金利は、短期的な景気循環や金融政策サイクルにはあまり影響されず、長期的なファンダメンタルズの水準(潜在成長率、インフレ率、財政リスクプレミアムなど)を反映するものと考えられる。

たとえば、米ドルスワップ金利市場において、10年後スタートの10年金利というフォワード金利の動きを見てみよう(以下、10年10年金利)。2011年前半まで4%台後半で推移していた10年10年金利は、欧州債務危機が深刻化しつつあった2011年夏に一気に3%水準まで低下した。反転の動きが見られ始めたのは2012年夏のことであり、1年かけてようやく今年の8~9月に元の4%台後半まで戻ってきたのである。

10年10年金利の4%台後半という水準が、長期的にみてピーク水準なのかどうか断定はできない。ただし、ひとつの目安として、「潜在成長率2%+インフレ率2%+リスクプレミアム1%=5%」というような水準感を持つことは可能であり、10年前に同様な計算をすると、適正金利水準は現在より1~1.5%高かったと考えられる。実際に、2003年前後の10年10年金利の平均水準は現在より1.5%程度高い6%台半ばだった。

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