米国政府閉鎖の危機、収束でも年内燻り続ける みずほ総合研究所シニアエコノミスト・小野亮氏に聞く

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――共和党が多数を占める下院は、暫定予算案について、オバマケア(医療保険改革)の導入を1年延期することを盛り込んだ修正案を可決、政府機関の閉鎖の危機が迫っています。

暫定予算、債務上限の問題ともオバマケアが争点になってしまった。いくつかの世論調査を見ると、オバマケアそのものには確かに反対の声はあるが、政府機関の閉鎖を伴ってまで反対すべきかといえば、それは困るという声が多く、共和党の対応は歪んだものだといえる。

そうなってしまったのは中間選挙において、共和党のなかでは保守派が勢いを増し、指導部のガバナンスが機能しなくなっていることが背景にある。しかし、民主党からすれば、中間選挙で勝って信認が得られたのだからオバマケアで譲歩する必要はないということになる。

暫定予算を巡る交渉は正念場を迎えている。民主党が多数を占める上院がオバマケアを前提とした元の案に戻し、東部時間で9月30日の24時過ぎまで揉めるのではないか。日本時間では10月1日午後に伝えられることになるだろう。アジア市場はそれまで動きようがない。

過去最大の政府機関の閉鎖は1995年12月~96年1月にかけておきたが、その前月の11月に5日の閉鎖があった。最初の5日間の閉鎖では80万人の連邦職員が一時帰休となった。2回目の21日間にわたる閉鎖では24.8万人が一時帰休、このほか47.5万人が無給で働いたと言われる。

予算が決まらなかった場合の政府機関の閉鎖は1980年代初頭に司法長官が意見書を出して、厳格に運用されるようになった。他人の生命・財産の保全に関わるものしか例外とされない。一時帰休せざるを得ず、かなりの混乱が起こるだろう。10月1日の半日ぐらいで済めば御の字かもしれない。

金利は政府の選択的デフォルトを織り込み

上院案は11月15日までの暫定予算、下院案のそれは12月15日までとなっているので、暫定予算が通っても、感謝祭前、クリスマス前にまた騒動が繰り返される。今後も、厳しい事態が予想される。

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