トランプ政権が抱える3つの不都合な真実 ロシア疑惑、バブル懸念、軍産複合体

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トランプ大統領の「不都合な真実」を大きく分けると3つだ。ロシア疑惑を乗り越えられるのかどうか。次に金融市場のバブル懸念。そして戦争ビジネスへの邁進だ。

まずは「ロシアゲート」と呼ばれる疑惑だ。大統領選挙の選対委員だった人物が逮捕、起訴されるなど、トランプ大統領が抱えるロシアとの不適切な関係が明るみに出ている。

とりわけ、大きなインパクトを与えたのが、トランプ大統領陣営の選対本部長を務めたポール・マナフォート氏が脱税や資金洗浄の疑いで起訴されたことだ。ウラジーミル・プーチン大統領に近い富豪から報酬を受けていた疑惑などが浮上しており、マナフォート氏の仕事仲間で、大統領就任式のプランナーだったリック・ゲイツ氏も起訴されている。両者合わせて13の罪状がついている。

トランプ陣営の一員だったジョージ・パパドポロス氏も起訴されている。パパドポロス氏は司法取引に応じて捜査協力をしており、トランプ陣営とロシアの関係を暴露するのではないかといわれている。同氏は、直接ロシア外務省幹部と協議した人物として知られており、トランプ陣営にとっては絶体絶命の危機ともいわれる。

加えてトランプ大統領のアジア歴訪直前に明らかになった「パラダイス文書」によって、主要閣僚の1人であるウィルバー・ロス商務長官が、ロシア政府と緊密な関係を持つ企業に投資していたことが明るみに出ている。

トランプ大統領自身もアジア歴訪中にロシアのプーチン大統領にささやかれた言葉を鵜呑みにして、「CIA(中央情報局)の情報よりも、プーチン大統領の言葉を信じる」と発言。大きな問題になっている。

実際にトランプ本人がロシア疑惑に関与しているかどうかだが、弾劾裁判で辞任に追い込まれたリチャード・ニクソン元大統領のように、直接本人が関与した証拠が出てこないと、なかなか弾劾裁判にまで発展しないかもしれない。

とはいえ、選挙で負け続けている共和党が、来年行われる中間選挙までに弾劾裁判を起こさざるをえない状況になる可能性も否定できない。

忍び寄るリーマン越え経済危機の影?

第2のポイントは、トランプ大統領が決まった直後から世界の金融市場で展開されてきている「トランプラリー」と呼ばれる大相場だ。トランプ大統領の支持率が、最低限の30%台を維持できているのも株高があるからともいわれるが、ここにきて米国のハイイールド債市場で異変が起こるなど、バブル崩壊の様相を呈している。

いま目の前に迫りつつある危機と言ってもいいかもしれない。たとえば、みずほ総合研究所の長谷川克之市場調査部長、世界の金融業界ではいまそこにある危機として「HIEER(ヒア)」と呼ばれる危機が拡大している、と指摘している。

HIEERとは、ハイイールド(High Yield)、IT(ハイテク株)、ETF(株価指数連動型投資信託)、新興国(Emerging)、不動産(Real Estate)の5つの市場の頭文字を取った言葉だが、これらのマーケットがバブルになりつつあるのではないかと懸念されているのだ。実際、11月第2週(6~10日)を襲った株安の原因の1つは、米国ハイイールド債市場での異変が原因といわれる。

トランプラリーの背景には、大統領が公約として掲げてきた法人税、所得税の大型減税案がある。ニューヨークダウが史上最高値を更新し続ける中で、株高は新たなバブルも引き起こす。そのバブルの中心地がまたしても米国の金融市場ということになるわけだ。

次ページもしまたリーマンショック級の経済危機が訪れたら?
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