「トランプ大統領豹変」に2大政党が大慌て これぞトランプ流取引術なのか
米国の政策運営が、激震に襲われている。きっかけは、ドナルド・トランプ大統領が民主党と結んだ「ディール」。党派へのこだわりが薄いトランプ大統領の本領発揮に、2大政党が振り回されている。
それは異様な光景だった。
9月18日、民主党の下院トップであるナンシー・ペロシ下院院内総務が、地元サンフランシスコで開いた政治集会で、聴衆から猛烈な抗議にさらされた。壇上に上がった聴衆がペロシ院内総務に詰め寄る騒ぎとなり、政治集会は中止に追い込まれてしまった。
ペロシ院内総務といえば、過去10年にわたって下院民主党のトップに君臨する実力者である。女性初の下院議長を務めたこともあり、地元の支持は盤石。ほとんどの選挙において、80%以上の得票率で再選を重ねてきた。そのペロシ院内総務が、地元の集会で壇上から追われたのだから、ただごとではない。
民主党支持者は疑心暗鬼
抗議の原因は、ペロシ院内総務が、上院民主党のトップであるチャック・シューマー院内総務とともに、トランプ大統領と結んだディールである。9月13日にトランプ大統領と2人の民主党議員は、不法移民問題への取り組みで合意を交わした。トランプ大統領が求める不法移民の入国に対する警備強化と引き換えに、民主党が求めてきた若い不法移民に国内滞在を認める特例措置(DACA)の延長に協力する内容である。
DACAは幼少期に親と共に不法入国した若い不法移民に対し、一定の条件の下で強制送還を免除する措置である。2012年にオバマ政権が導入した措置だが、法的な根拠が疑問視されていたこともあり、今年の9月5日にトランプ政権が、来年3月をメドに廃止する方針を明らかにしたばかりだった。
「あの仇敵と手を組むために、いったいどこまで譲ってしまったのか」。不法移民への厳しい主張で知られるトランプ大統領と、それに真っ向から反対してきた民主党の指導部が結んだ取引は、2大政党の支持者を驚愕させた。DACAでは保護されない若年以外の不法移民はどうなるのか。厳しい国境警備策を受け入れる必要はあるのか。混乱に陥ったペロシ院内総務の集会の背景には、関係者による疑心暗鬼の高まりがあった。
困惑しているのは、共和党も同じである。融通無碍に繰り出すトランプ流のディール術に翻弄されている。何しろ、ディールが本格化したのはここ最近。それまでのトランプ大統領は、オバマケア改廃や税制改正などの重要課題において、一貫して議会共和党に主導権を握らせてきた。民主党と手を組む気配は、ほとんど感じられなかったのが現実である。
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