トランプ発言が北朝鮮紛争を招く本当の理由

「戦争用語」を理解していないから怖い

トランプ大統領による過激な発言は、将来的に北朝鮮がその意図を読み違う危険性をはらんでいる(写真:KCN/ロイター)

朝鮮半島の緊張感が和らぎつつある中、8月21日から10日間の日程で、「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」として知られる例年の米韓合同の軍事演習が行われている。

米国の外交官、軍事指導者、また民間の専門家の多くは、北朝鮮との差し迫る軍事衝突に対して高まる恐怖を押し込めようと尽力してきた。そして、ついにレックス・ティラーソン米国務長官が、北朝鮮について「国連安保理決議の満場一致で(制裁決議が)採択されて以来、北朝鮮のいかなる場所でもミサイル発射や、挑発的な行動は起きていない。おそらく、近い将来の対話への道筋が見えてきているのだろう」と発言するに至った。

ドナルド・トランプ大統領も、先週アリゾナ州フェニックスで行った演説の中で、ティラーソン国務長官の発言を繰り返した。現時点では、最悪の事態を避けることはできているが、トランプ大統領が金正恩朝鮮労働党委員長と熱心に繰り広げた舌戦は、何げないツイートで再び始まりかねない。朝鮮半島危機はなくなったのではなく、後退したにすぎないのである。

トランプ発言はなぜ問題なのか

その背景には、北朝鮮による核開発能力の向上に加えて、これを使うという金政権による絶え間ないプロパガンダ的脅迫があるのだが、これは何ら新しいことではない。同じようなことは、過去何十年間と繰り返されてきた。

今回のことで、大きな問題として残っているのは、トランプ大統領の衝動的な発言により、「予防攻撃」「先制攻撃」、そして「報復攻撃」という戦略の間にあった区別があいまいになってしまったことである。多くの軍事戦略家が注意を喚起しているように、こうした区切りがあいまいになることで北朝鮮側が米国の軍事的意図を読み違え、先制攻撃に対する恐怖心が膨れ上がった揚げ句、先に行動を起こしてしまうということも考えられるのだ。

トランプ大統領の一連のツイートや発言に対して、首都ワシントンではいまや、北朝鮮の核兵器開発を止めようとする米国の長年の努力を無駄なものにしかねない、との失望が広がっている。北朝鮮の長期的な核武装解除に向けた効果的な戦略を作り出す努力は、政府内外で進められていた。そして、トランプ大統領の暴走を抑えることも、この一部と考えられてきたのである。

北朝鮮との緊張は、7月に同国が2発の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行ったことで一気に高まった。一連の実験は、北朝鮮による米国本土を攻撃するという野望に向けた技術開発が、多くが予想していたよりずっと早く進んでいることを示唆していたため、米国の情報機関を驚かせたのである。ワシントンポスト紙によると、米国防総省の国防情報局(DIA)は、北朝鮮は、ICBM上に搭載可能な小型化された核弾頭の開発に成功したと結論づけた、と報じている。

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