非製造業より儲かっていない日本のメーカー リーマンショック以降、回復が遅れる製造業の利益率

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製造業の利益率が低下 非製造業より低い水準に

日本企業の収益構造は、この数年間で大きく変わった。リーマンショック前と比べると、大まかにいって、売上高が10%程度減少しただけでなく、利益率が5%程度低下したのである。このために、営業利益が15%程度減少したのだ。

ただし、状況は、業種によってかなり異なる。まず、製造業と非製造業で大きく異なる。

非製造業の場合、08年4~6月期と12年10~12月期を比較すると、売上高は245兆円から224兆円に減少し、営業利益は7.9兆円から7.6兆円に減少した。しかし、減少率はさほど大きなものではない。一方、利益率は3.2%から3.4%に上昇した。途中の期間でも、ほぼ3%程度の水準を維持してきた。

しかし、製造業の利益率は、上図に示したとおり大きな変化を経験している。リーマンショック前の07年には5%を超える水準だった。リーマンショック直前でも4%台だった。しかし、経済危機によって利益率が急減した。その後、3%台の水準まで回復したものの、11年の東日本大震災で再び落ち込み、2%台になった。この状態が、現在に至るまで継続していることが注目される(12年10~12月期にやっと3.1%に回復した)。つまり、震災によって、製造業の利益に構造的な変化が起きたのである。これは、原材料価格とエネルギー価格の上昇によるものと考えられる。

非製造業のほとんどは内需型の産業であり、為替レートによってはあまり大きな影響を受けない。経済危機前には製造業より利益率が低かったが、大震災後では、非製造業全体としては、製造業より高くなっている。12年10~12月での利益率は、次のとおりだ。

建設業(2.8%)、情報通信業(7.7%)、運輸業・郵便業(6.1%)、卸売業・小売業(1.6%)、不動産業・物品賃貸業(10.4%)、サービス業(5.5%)。

このように、建設業と卸売業・小売業以外の業種では、利益率が製造業の値よりかなり高くなっている。

日本の株式市場では、これまで「円安が進むと株価が上昇する」という傾向が顕著に見られた。最近でも、円安が株価を引き上げている。しかし、以上で見たように、為替レートによって利益率が左右される製造業の利益率が低下し、非製造業の利益率が上昇しているのである。後者では、為替レートは利益率引き上げ要因にはならない。むしろ、円安になるとガソリン価格や電気料金の上昇で利益が圧迫される。日本の株式市場の反応は、大震災後の日本の経済構造を正しく反映したものとは考えられない。

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