私が“株高予想”を信じないワケ 株価が上がっても構造問題は深刻化

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総じて売れる本というのは二種類に分かれ、「日本は凄くて絶対大丈夫」という”安心させ系”に振れるか、「日本は大変でお先真っ暗、沈没あるのみ」という”脅し系”に振れるかのどちらかだ。共通するのは両方外れるということだが、残念なことに平凡な現実を真面目に議論する優れた本や著者は一般受けしない。

年始早々文句ばっかり言って何がいいたいかというと、投資というのは素人が手を出すと失敗する事が多いが、“著名な専門家”も全然あてにならない(私も人のことを言えないのだが)。

投資の王道はやはり、つまらなくても現実的なテーマを着実に分析し、機関投資家のプロも愛用する我らが東洋経済の『四季報』など、派手さは無いが非常に有用なデータや情報とにらめっこして、地道に自分で考えることである。投資は皆が同じことを考える前に動かなければ値段は上がってしまうのだから、専門家が話したり本に載っている時点でもう遅いのだ。

株価は上がっても、構造的問題は着実に悪化

さて、最近のマーケット動向に見られるよう、株価が上がると経済が好転したような錯覚を覚えるが、このままでは長期的に続いて消費を押し上げ投資を促進するまでの力を持たず、本当に錯覚で終わるだろう。

社会保障制度の破綻、雪だるま式に膨れ上がる財政赤字といった経済の構造問題は2013年の年末時、さらに悪化する。これら諸問題は人口の高齢化に伴う避けられない構造問題である。政治力の強い高齢者層の利権を若年齢者層に移転する政策がなければ、これら日本経済の根本的問題の深刻化は避けられない。

しかし日本では、高齢者の”権利”とその周辺にある医療ビジネス等の利 権が、政治的に手厚く保護されているので改革は難しい。私の中高時代の同級生は医者が本当に多いので、これを書くと彼らは怒って私を年末の忘年会に呼んでくれなくなるわけだが、ここだけの話、全然体調が悪くないのに単なる触れ合いを求めて病院に足しげく通う高齢患者も非常に多い。無用で多額の税金が医療現場に流れているのだが、ご存じの通り医師会の政治力は強くこの既得権益に切り込むことは難しい。

増大する高齢者層が若年層にのしかかる今の経済構造(年金制度や医療負担・雇用制度)を変えなければ、お金を刷りまくることへの期待(正確には馬鹿な投資家が買い上げるだろうという期待)で一時的に市場が動いても、長期的にはデフレの根本原因(需給ギャップ・社会保障制度の破綻・巨額の財政赤字)は解決されないだろう。

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