安倍氏が変われば、日本が変わる 日・中・韓で見た歴史問題

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グローバル化の進展により、国の枠を超えて活躍する「グローバルエリート」が生まれている。しかし、そのリアルな姿はなかなか伝わってこない。グローバルエリートたちは何を考え、何に悩み、どんな日々を送っているのか? 日本生まれの韓国人であり、国際金融マンとして、シンガポール、香港、欧州を舞台に活動する著者が、経済、ビジネス、キャリア、そして、身近な生活ネタを縦横無尽につづる。
ソウルで人気の日本料理店。日韓の政治関係は冷え込んでいるが、民間レベルでは交流が深まっている(写真:ロイター/アフロ)

 「日本は世界の超大国だという意識や自信が極めて希薄だ。中国が大きくなったとはいえ、日本の底力はものすごいものがある」

新羅ホテルの隣のソウルクラブ(朝鮮王朝末期に高宗皇帝が迎賓館として建てた社交クラブの建物)で、一番尊敬している元・韓国政府高官との食事に10分遅れ、青ざめた顔でタクシーをせかしながら到着した私は(お詫びにエルメスのネクタイを新羅ホテルの隣で準備しつつ)、それはそれはおいしいカルビ定食を頬張りながら、新しい指導者を迎える日韓の政治動向に関し意見を交換していた。

前回は中国での経験から領土問題について語ったが、今回は出張でたまたまソウルに来ていることもあり、韓国でさまざまな人に話を聞いてみた。その生の声を、『東洋経済オンライン』の読者の皆様にお届けしたい。そして最後に “これからの若い世代”が、(来年の参議院選以降もめる可能性が高い)東アジア外交に向き合うべきか、所感を述べさせていただきたいと思う。

韓国国内で、大統領の強硬姿勢は支持されていない

「ほんと、ここのテールスープおいしいの。毎回友達とソウルを訪れると絶対この店に来ているんだけど、おいしいしお肌もプルプルになるし……」「わー、ほんとおいしいー、あきこちゃんと韓国に来て本当によかった」

「いらさいませ、日本のお客様ですか?」「すいませーん、写真撮っていただいていいですか?」

ホテルの食事を避けて私がよく行く、南大門市場の脇道のそのまた脇道に地元で有名なローカルテールスープ食堂があるのだが、そのマニアックでガイドブックに載っていない所にも、若い日本の女の子の黄色い声がこだまする。

今年は歴史認識をめぐる一部政治家の相変わらずの発言と、韓国側からは大統領による一連の“強硬姿勢“で政治関係が急激に冷え込んだが、今回ソウルに来て感じた限りでは、民間レベルでの交流はこのテールスープ鍋と同じくらい熱いままである。

実際、李大統領の対日強硬姿勢について私が政府高官からタクシーの運転手さん、大学生の女の子まで幅広く聞いてみたところ、「本当に国民の思いを代弁して純粋な気持ちで行ったのなら支持するが、今回は国内問題から目をそらすための政治的理由でやったことなので、大切な対日関係を悪化させて到底支持できない」との声が大半であった。

一昔前と違って変わったな、と思ったのは、日本対韓国の図式になっても一概に自国政府を感情的に支持しないことだ。また日本の事情への理解も深まっており、一般の日本人が歴史問題を蒸し返そうとしているのではなく、一部の政治家がやっていることなのだから、韓国人は一般の日本人に対して総じて悪い感情など持っていない。むしろ最近外国人のお客さんがソウルに来ることが非常に増えているが、「日本人が圧倒的に礼儀正しくマナーもあり一番優しい」と異口同音に語っていた。

私が日本で生まれたため、それに配慮してよいことを言ってくれているのだとしても、総じて“日本のお客様歓迎いたします”ムードはソウルの街の至る所にあふれていた。

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