瀕死のWOWOWを救った幸之助流「経営のコツ」 最後の愛弟子が語る「3+7」の復活劇とは

✎ 1〜 ✎ 147 ✎ 148 ✎ 149 ✎ 最新
拡大
縮小

──「3+7」の7番目の決め手に「陣頭指揮と劇的演出」とあります。いわば巧まざる演出……。

加入者が増え、経費が下がって、3年目に利益が出た。自分でもビックリです。WOWOWが漂流した最大の理由は経営理念が確立していなかったこと。僕は最初から経営理念を作りたかった。経営理念は「お客様満足」と「共存共栄」です。

でも当初、僕は社員に信頼されていなかった。そんなときに何を言ってもダメ。若い連中は「松下流を押し付けないでください」と抜かしおった。それが1年経って赤字が半分になった。おやっ、と思ったんじゃないかな。2年目に僕が「経営理念を作る」と宣言したら、「それ、待っていました」と言ってくれた。

津賀氏の中には幸之助が生きている

──佐久間さんは幸之助さんの経営のコツを活用してWOWOWを再建しました。しかし、同じDNAを受け継いでいるはずの日本の電機産業の存在感が薄れています。

時代の流れをどうつかむか。幸之助は市電を見て「これからは電気の時代だ」と直感し、奉公先の自転車店を辞めたんです。山下(俊彦・元松下電器社長)は家電から産業エレクトロニクスへの転換を目指した。その流れをどう継承しようとしたのか、でしょう。その頃、僕はこっちのほうで必死でしたが(笑)。

でも、津賀(一宏・パナソニック社長)の考えは、産業エレクトロニクスへの転換に似ている。津賀君の中に幸之助が生きると思います。彼は幸之助離れしてませんから。

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT