鉄鋼業界で総合力世界一を目指す 宗岡正二・新日鉄住金会長兼CEO

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--あらためてどういう会社にしたいか。

1つはスケール。もう1つは技術力。鉄に関するあらゆる面で磨いていく。もう1つはコスト競争力。グローバルで存在感のある会社にしていきたい。

技術力でいえば、新日鉄が保有する国際特許は900件を超えている。日本のライバルメーカーは300件強。韓国のライバルメーカーは200件強。アルセロール・ミタルは100件強。こういう段差が少なくとも足元ではある。

これが住金と一緒になると、800人の研究スタッフを抱えて、700億円の研究コストをかけることになる。そんな鉄鋼メーカーはたぶん世界でもない。ライバルに対しもっと距離感をもたせることができる。

コストという面でも、省工程を進めることや、圧延加工技術での作り込み。あと、コストに効くのが、劣質原料をどう使いこなすかということ。ほかの会社が3割くらいの劣質原料を使っているのであれば、われわれは5割以上使えるようにするなどで十分コストは賄える。

歩留まり、スピードでも技術差がある。これによりコスト差を埋められる。

--統合効果1500億円は計画を上回りそう?

君津製鉄所の転炉

足元の経営環境からすれば、それを上回る規模でやらないといけない。当初3年で実現するという計画もよりスピードアップして実施しなければいけないということは、住金とも情報交換で共有化している。下期からしかるべく手を打っていく。

これは見えている世界で言っているコストダウンのこと。それ以外でも新しい製品をつくることで、より高い限界利益が確保できる。それによって、当然収益も変わってくる。そういう合わせ技でやっていけば、十分に効果は出せる。

上積みのメドはこれから。コスト情報にかかわる情報開示というのはコンプライアンス上、共有されていない。合併以降にぱっと始まる。

--研究開発資金は単純合算で700億円になる?

人員や予算を圧縮しようとは必ずしも思っていない。むしろその規模を投入することで、効果を大きく取りたい。だから、そのぐらいの人員、予算をつけていきたい。

ただ、同じことを重複してやっていっても意味がない。そこで浮いてきた技術系の人員は海外で使うということはありうる。だから、グローバル展開はほかのメーカーよりも、より速く、より広範囲に、より効率的にできる。というのは、やはりそういったヒト、モノ、資源を有効に使うということが1社でやるよりは、2社でやるほうがはるかにスピードアップできるからだ。

研究のアプローチというのは、右から入っていくものと、左から入っていくものが、足してみれば、パタパタと一気に見えてくることがある。そういうことも研究開発では期待できる。

--コストダウンの中身は?

コストダウンというと、固定費構造をどうしていくかことになってくる。これに手をつけていくというのは、経営としてありうる。

 下工程の生産ラインをどうしていくのか。もっと中長期の観点から見て、鉄源にも手をつけるのがいいのかどうか。

ただ、統合することによって、何かを止めちゃうとか、どこかを廃止するということは、やや消極的なスタンスだ。投資をしている以上、それを有効に活用したい。

ただ、新日鉄が3つラインをもっていて、2つにはできない。ただ、住金も2つもっていて、5つになる。それを4つにはできるのではないか。こういうことで何らかのかたちで統廃合もできるのではないか。

そういうことは1500億円のなかには入っていない。

 

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