鉄鋼業界で総合力世界一を目指す 宗岡正二・新日鉄住金会長兼CEO

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--やはりスケールも大事?  

グローバル展開は主に自動車を中心にやってきた。今後は、それだけではなくて、先般、東アジアや米西海岸の建材用の薄板の需要を捕捉するべく、豪ブルースコープの薄板の製造ラインと販売拠点の権益の50%を取得した。鉄源だけでなく、下工程も含めた新日鉄の息のかかった製品が世界で6000万~7000万トン出るよう目指したい。

ただ、その量が目的化するのは避けたい。1つひとつの収益性を吟味して、きちんとやっていきたい。

今回の統合を機会に、財務構造も改革していく。入りをどうはかり、出をどう制するのか。資産をどう精査するか。むやみに投融資を行うことは必ずしも考えていない。

世界の鉄鋼業は中国中心に2002年からぐっと伸びたが、その反動がいま起きている。言ってみれば、世界の鉄鋼業の構造改革が求められている。その中で、われわれとしてもしっかり構造改革を行っていきたい。

ただ、世界では鉄需は伸びると思うので、捕捉していきたい。

--新会社の強みと弱みは?

技術力とグローバル展開力。それから世界の同業者からの信頼を得ていることも大きな強みだ。だから、タタなど各国のトップメーカーと手が組めている。

課題はコスト競争力。ドルとかウォンに対する円高がきつい。そして、残念なのは日本企業の4重苦、6重苦が放置されたままになっていること。

これは日本の立地競争力そのものだ。これを放置していることが競争力、日本の経済力を落としている。日本の周辺国は、その競争力をどうやって確保するか、韓国も中国もシンガポールも政治が一生懸命考えている。 

政治を担う人が改善していってくれれば、自動車、あるいは家電というところが、日本の製造拠点を大事にしながらやっていくことができる。

そうすれば、われわれのつくる材料も製品の競争力を確保するために産業の基盤として支援もできる。

われわれも円安になる前提でいるわけではないが、日本が成り立つためにはどうしたらいいのか。日本の経常収支なり国際収支をどうやって維持していくのか。資源のない日本がどうあるべきなのか。とすると、日本が金融で生きていけるはずもない。たぶん、日本はものづくりでしか生きる力がないのではないか。

それが日本の大きな良質な雇用を提供している。政治的に考えれば、日本のものづくりをしっかり維持していかなければならないのではないか。と、いずれ政治がきちっと対応するはずであろうと思う。

そうすることで、日本の経済、雇用が維持される。そうでなければ、日本の経済、雇用は破綻の道を歩むのではないか。

--高炉の能力削減は?

聖域なく考える。ただ、鉄源となると、地域に与える影響、労働組合員に与える影響は大きいわけで、中長期のものの見方の中で決めていくことになる。

--汎用材でも中韓勢に勝つことを目指すのか?

ハイエンドについては技術レベルで圧倒的な優位性を持っている。研究開発要員を増やすことによって、これがさらに増すだろう。彼らとの距離感が一時期、かつてに比べ縮まったが、これをまた引き離す。

量的な意味でいえば、新興国と十分伍していけるコスト構造にしていく。そこがきちっと伍していければ、競争力もついてくる。

--国内の効率化で人員に余剰感が出てくるか?

国内の生産規模は維持する。ただ、効率化の中で、人の活用も考えられる。これは海外中心に活用したい。

雇用に手をつける気はまったくない。

 

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