一方で、すでに山本の音楽を人生の一部として受け止めている人たちもいる。ソロとして最初のシングル「イチリンソウ」には、今もさまざまな声が届くという。
「社会人1年目によく聴いていた」「実家を出て一人暮らしを始めた頃を思い出す」ーー。
「私自身の節目として書いた曲が、聴いてくださる方それぞれの人生の中にも存在しているんだなと感じるんです」
多くの人に知られることと、誰かの心に深く残ること。その両方を求めながら、山本は曲を書き続けている。
本番前に吐き気止めも…武道館で手にした「自信」
歌えて、踊れて、ギターも弾ける。アイドル時代から多彩な才能を発揮してきた山本だが、その内面は、必ずしも自信に満ちていたわけではない。
以前の取材では、自分に自信を持てないと語っていた。完璧なステージを求め、本番前に吐き気止めを飲んでいた時期もあったという。
「ミスをすることが許せないというか。もちろん、ミスはないに越したことはないんですけど、じゃあ、ミスをしなければいいライブなのかと言われると、必ずしもそうではないなと気づいたんです」
大きな転機となったのが、今年7月に開催したソロデビュー10周年記念の日本武道館公演だった。
筆者も会場に足を運んだ。アーティストによって大きくも小さくも見える武道館だが、この日の山本の存在感を前にすると、その空間が不思議と小さく感じられた。

「武道館って『魔物が住んでいる』と言われることもある場所じゃないですか。そんな武道館で、心から『ベストだった』と言えるライブができた。それは本当に、自信と財産以外の何物でもないと思います。自分はまだまだ腐っていないな、ということも再確認できました」
ステージから見た景色、客席から届いた熱量。そのすべてを、死ぬ間際にも思い出すだろうと語る。
「皆さんの声や熱量が、そのまま自分に乗っかっていたような感覚はありましたね。お客さんと、そのエネルギーを共有できた感じがしました」


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