クラウド・ホスティング事業などを手がけるリンクが25年11月に行った調査によれば、79.2%の人が過去1年間に不審なメールを受け取ったという。60歳以上では92.0%に達する。また、27.5%の人が「不審だと思ったメールが実は正規のメールだった経験がある」と答えている。つまり、警戒心を強めれば、必要な情報まで排除してしまう危険があるのだ。
こうして、情報のやり取りに対する信頼が、根底から失われつつある。そうするうちに、どんなメールも偽物に見えて、怖くて開けなくなる。初めての相手からのメールは、まず開けない。
企業など名をよく知っている組織からのメールでさえそうだ。差出人に心当たりがなければ、重要な連絡であっても、無視するか、削除してしまう。
銀行、クレジットカード会社、通信会社、さらには政府機関や自治体からのメールであっても、本物だとは限らない。差出人の名称や企業のロゴが正しく表示されていても、それだけでは信用できない。偽メールは本物と見分けがつかないほど巧妙になっているからだ。
とくに、個人情報の入力を求められる場合には、神経をとがらせる。パスワードの再設定や本人確認を求めるメールが届いても、それが本当の手続きなのか、個人情報を盗み取るためのワナなのかを判断しなければならない。
慎重に行動しても急いで行動しても危険
以前の偽メールには、不自然な日本語や誤字などが目立つものが多かった。しかし最近では、生成AIを利用すれば、自然で説得力のある日本語の文章を簡単に作成できる。文章の不自然さを手がかりに偽物を見抜くことが難しくなっている。
困るのは、本当に重要な連絡が届いた場合だ。銀行から不正利用の疑いを知らせるメールが届いても、偽物かもしれないと考えて放置してしまう。一方で、すぐに対応しなければ口座を停止すると書かれていれば、慌てて偽サイトにアクセスしてしまう危険がある。慎重に行動しても、急いで行動しても、危険があるという状況なのだ。
こうして、インターネットを安全に利用するために必要な警戒心が、いまやインターネットを利用するうえでの大きな負担になっている。企業からの連絡を信用できず、重要な通知さえ安心して受け取れない。インターネット社会を支えてきた情報のやり取りに対する信頼が、根底から失われつつあるのだ。


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