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戦争を終わらせないのは「白黒をつけたい」世論と専門家だ――昭和日本とウクライナに共通する「失敗の本質」

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ウクライナの国旗
曖昧さを許さない社会こそが、戦争を始める(写真:oqtave/PIXTA)
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今日の歴史研究が、加藤のこの仮説と整合するのかは知らない。むしろそれより、はるかに重要なことを、ぼくたちは知っているし、知る必要がある。

そして戦禍が、イランへと移る先に

争う相手とのあいだで意見や解釈の相違を許容できず、「曖昧さ」を抹消しようとする発想に基づいて、平和を回復することは原理的にありえない。もしその道を突き進むなら、最後は核を使って敵の存在そのものを、地上から消すほかはなくなってしまう。

自分の信じる正しさだけで、メディアやSNSを塗り潰させようとする専門家やそのフォロワーは、「矮小なルーズベルト」のようなものだ。集団で罵声を浴びせるネットリンチや、訴訟の脅しで投稿の削除を強要するのが、彼らの使う「原子爆弾」である。

だが1945年、文字どおりの原爆投下の後で日本が降伏したときですら、その降伏が無条件か有条件かは曖昧なままだった。そんなことは許せない、認識が齟齬する余地などすべて潰すのが「正しい」秩序だと固執するなら、たとえば核の力で天皇制の存続を物理的に不可能にするまで戦争が続き(注9)、敗戦後も日米の和解などありえなかっただろう。

誰もが知るとおりこれは、もはやたとえ話に留まらない。2026年2月28日、アメリカとイスラエルは、イランの宗教的な最高指導者ハメネイを文字どおり「爆殺」した。あたかもトルーマンが皇居を空爆して「日本人よ、民主化し降伏せよ」と声明するようなもので、プーチンすらキーウでやらなかった暴挙だ。

今後、ウクライナ戦争がいかなる結末を迎えようとも(さらには、中東で火を噴いた戦禍がどこに帰結しようとも(注10))、ぼくたちはそのことこそを、教訓として語り継がなければならない。

なぜなら─「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」からである。

注
1. 加藤陽子『日本近現代史5 満州事変から日中戦争へ』岩波新書、2007年、37・61頁。
2. 河野有理『偽史の政治学』白水社、2017年、232~233頁。
3. 鈴木多聞『「終戦」の政治史』東京大学出版会、2011年、216頁。
4. 原彬久『吉田茂 尊皇の政治家』岩波新書、2005年、90~92頁。
5. 当時の雰囲気を伝える証言に、小林信彦『一少年の観た〈聖戦〉』筑摩書房、1995年、33頁。
6. 実際に交渉の目前、ゼレンスキーは「中立化」を受け入れる可能性をロシアの独立メディアに語り、世界に報じられていた。BBC「ゼレンスキー氏、「中立化交渉の用意ある」 ロシアと28日からトルコで対面協議へ」2022年3月28日。
7. 拙稿「「バーチャルな戦争」の時代に見つめ直す「参謀」の真価」Foresight、2022年9月24日。
8. 加藤典洋『アメリカの影』講談社文芸文庫、2009年、249頁。
9. 天皇制(立憲君主制)の存置を約束することで、日本側に無条件降伏の受諾を促すというオプションは、1945年5月には米政府内でも有力だったが、7月の原爆実験成功により放棄されたと見られている(同書、283~293頁)。
10. 6月に覚書に署名したアメリカ・イランの停戦合意が、早くも破られた理由を「双方が自らの解釈を押し通すために武力を使うことを選んだ」とする解説は、西側のメディアでもすでに、実際に語られている。CNN「米イラン協議の決裂、「終わりなき戦争」の恐れ」2026年7月17日。

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