その背景には、アラブ系市民の意識の変化が指摘されている。クネセット(イスラエル国会)には、発足当時の49年からアラブ系議員が存在してきた歴史があるが、万年野党だったこともあり、市民の投票意識は高くなかった。
それが、21年のベネット政権でアラブ系政党のラアムが史上初の与党入りを果たした。自分たちの投票によってイスラエルの政治を変えることができるという成功体験となった。
23年10月から始まった戦争により、ガザでの激しい戦闘やヨルダン川西岸地区での入植者による暴力が激化した。アラブ系住民の間で「次は自分たちの集落や存在そのものが標的になるかもしれない」という危機感が生まれ、投票所へ足を向かわせたとも分析されている。
アラブ系政党が躍進した理由
アラブ系政党は一枚岩ではなく、過去の選挙では細分化して激しく対立した経緯がある。アラブ系市民は政治的絶望感から投票をボイコットし、投票率は一時40%台まで低迷した。
しかし今回は、危機感を共有したアラブ系政党側がある程度の連携を示したため、「自分たちの票が無駄にならず、国会で巨大なブロックに」という期待感が一気に復活したことも大きいだろう。
クネセットは「全国1区の完全比例代表制」を採用している。得票率3.25%を超えた党派は、得票数に応じて機械的に議席が割り振られるという阻止条項(足切りライン)が設定されている。
この制度の最大の特徴は、極端なまでに多党化が進み、1党だけで過半数を取るのがほぼ不可能という点だ。結果として、政権を作るには必ず数党による連立が必要となる。イスラエルではこれまで1党のみで政権を担ったことは一度もない。
ここで影響力を持つのが小政党の「ゆさぶり」である。6議席程度の政党であっても、彼らが連立を離脱すれば政権は倒れてしまう。それで首相は、彼らの政策要求が極端なものであっても、ある程度それを呑まざるをえなくなる。
今後の手続きはどうなるのか。まず選挙日から7日以内に結果が確定され、さらに7日以内に大統領と各党首代表との協議が行われる。その後、大統領が特定の議員1名を組閣権者として指名する。通常は第1党の党首が指名されるので、今回はリクードの党首であるネタニヤフ首相が指名されるだろう。
その後、組閣権者には28日間が与えられる。この間に組閣交渉が進められる。まとまらない場合、大統領の裁量により、最大14日間の延長(計42日間)が認められる。
もし連立交渉がまとまらなくて期日までに組閣できなかった場合、次のプロセスに移行する。最初に任命された者の組閣権が返上され、大統領は第2の候補者を組閣権者に指名する。ここでは通常、延長なしの28日間が与えられる。そして第2候補者も組閣に失敗した場合、指名権は大統領の手を離れ、クネセットに委ねられる。


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