それから、会社でまみと顔を合わせるのが気まずくなった。そんなときに、キャリアアップにつながる転職の話が舞い込んだ。ひさおは新しい会社へ移ることを決めた。
ところが、転職先の空気は、それまでの職場とはまるで違った。以前の会社は、社員同士が和気あいあいとしていて、アットホームな雰囲気だった。ところが、新しい会社は給与がよいぶん、成果を求める厳しさがあり、社員同士もピリピリしていた。
のんびりした性格のひさおは、職場になじめなかった。上司から厳しい言葉を浴びせられる日々が続き、41歳のとき、会社へ行けなくなった。病院の精神科を受診するとうつ病と診断された。
会社を退職し、約1年を療養にあてた。その後、再就職したが、生活を立て直しているうちに年月は過ぎた。結婚したい気持ちはあっても、出会いはない。どう動けばよいかわからなかった。ひさおが筆者のもとを訪れたときには、47歳になっていた。
「自分のこれからの人生を考えて、結婚してパートナーを得たいと思っています」。入会面談でこう言っていた。
恋愛経験がない男性の婚活
入会後、ひさおはお見合いを始めた。しかし、活動は順調とはいかなかった。
恋愛経験がほとんどなく、女性との距離の縮め方もわからない。15人ほどとお見合いをしたが、仮交際に進めたのは、そのうちの5人ほどだった。交際が始まっても、1~2度会ったところで、相手から交際終了を告げられることが多かった。
自分が「いいな」と思っても、次につながらない。不器用さの奥にある誠実さは、短いお見合いや数回のデートだけでは伝わりにくかった。
活動を始めて半年ほど経った頃、やっとひさおの良さをわかってくれる女性が現れた。それがみえだった。
2人はお見合いから仮交際に進み、会う回数を重ねていった。ひさおは、うまい言葉で女性を楽しませるタイプではない。それでもみえの話を聞き、2人の時間を大切にした。
みえも、ひさおと一緒にいると落ち着けたのだろう。やがて2人は真剣交際に入った。そして、このまま結婚へと進んでいくはずだった――。


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