VRを使ったゲーム自体は以前からあり、お台場の「東京ジョイポリス」にもVRシューティングゲームがあった。「イマーシブジャーニー」が興味深いのは、同じVRの技術を使いながら、ゲームというより、美術館や博物館、あるいは旅に近いということだ。ゲームを中心とする従来のVR施設とは、異なる客層を引きつけている。
今回の来場者から見えてきたのは、エジプト史を専攻していた人、印象派に関心を持つ人など、先に歴史や美術への関心がある人たちの姿だ。VRならではの非日常体験そのものが目的ではなく、実在する歴史や芸術の世界を、知識と体で往復しながら味わう。いわば“教養没入”である。
この“教養”という要素には、もう一つの強みがある。ゲームの多くは、まずその世界観を理解するところから始まる。だが、ピラミッドや印象派なら、多くの人がすでに知っている。入り口の説明がいらないぶん、VRに縁のなかった人にも届きやすい。
さらに共通の知識があるから、体験した魅力を人に語りやすく、家族や友人と語り合うこともできる。歴史や芸術そのものが、時代を経ても価値の落ちない強いIP(知的財産)になっているのだと感じた。
「没入できる」だけでは勝てない――日本IPは武器になるか
今やVRやプロジェクションマッピングで「没入できる」だけでは、人は集まらない。問われるのは、そこに入りたいと思える世界があるかどうかだ。
CinemaLeapが選んだのは、多くの人がすでに知識や憧れを持つエジプトのピラミッドや印象派絵画だった。現在の3作品はフランスの制作会社「Excurio(エクスキュリオ)」から提供を受けたものだが、2027年春には、浮世絵や江戸時代を題材とするオリジナル作品を公開する予定だという。
「近年はひとつのヒットコンテンツを、出版、映画、舞台、グッズなど多角的に展開することが当たり前になっています。その中に、今後は作品世界を3次元で体験するイマーシブ体験も加わっていく。日本のコンテンツを、体験として海外へ輸出できる可能性もあります」(大橋氏)
イマーシブ・フォート東京の終了は、市場の限界を示したのか。それとも、巨大施設という事業モデルの限界だったのか?
――この問いに対し、現在の客層の広がりを見る限り、一つの大型施設の終了だけで、市場を見限るのは早いようだ。日本には、浮世絵、漫画、アニメ、ゲームなど、世界中の人がその世界に「没入したい」と思うコンテンツがあり、ここで手を引くのは惜しい。
没入体験への需要は、たしかにある。作り込みと事業規模を両立できるかどうかが、没入型レジャーがブームで終わるか、産業として根づくかを分けることになりそうだ。
*1 『森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス』公式ウェブサイト チケット購入者データ(調査期間:2024年2月9日-2026年6月30日)
*2 累計来場者数(2026年10月時点)、来場者属性(期間:2024年12月~2026年10月)はいずれもCinemaLeap調べ


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