もちろん当時も、「自分に似合うかどうか」は大切だった。しかしそれ以上に、当時のファッションの価値は、「インパクト」や「ワクワク感」にあった。当時の服には、パッと人目を引くような存在感が求められたのだ。
なお、1980年代から1990年代初頭のDCブランドの服は高価な分、しっかりとした作りで着心地はよかった。「逆にしっかりしすぎていて重かったんです」と由紀さんは笑う。
ファッションに迷う59歳
現在は1980~1990年代のように、服にお金をかけられるわけではない。予算は限られる。由紀さんも、セレクトショップのアウトレットに足を運んだり、インナーやボトムスをファストファッションで購入したりして、工夫しているという。
でも何より、当時と現在とで異なるのは、自分自身の意識だとも感じるそうだ。「服を選んでいて、自分のイメージするものと少し違うなぁというときに、昔の自分だったら、ピッタリのものが見つかるまで何軒もはしごして探しました。でも最近は、あれこれ探すのがしんどいと感じます」。
さらには、現代は通販でいつでも服が買える。そんな中で、わざわざおしゃれして出かけ、店頭で服を買うこと自体も「しんどい」そうだ。
「海外マダムみたいに、自分に似合うおしゃれをすることに憧れる」という由紀さん。「59歳の自分が今、どういう服を着たらいいのかわからない。まったくイメージがわかなくて、お洋服の迷子状態なんです」。
1980年代は、憧れのブランドやデザイナーが打ち出すものをそのまま着ていれば、「おしゃれ」なのだと信じられた時代だったのかもしれない。しかし現代は、着るものに「自分らしさ」を求められる。それは「自分はこういう人間」だと、ファッションを通じて自分自身を演出することを意味する。
「自分らしさ」と「おしゃれ」、どちらも正解を見つけるのは難しいのに、さらにこの二つをどう両立すればいいのか。「おしゃれ」が好きだった人ほど、年齢を重ねた今、こうした悩みを持つことが少なくないのかもしれない。
しかし取材後にやり取りする中で、由紀さんはこうも話していた。「取材を受けてから、改めて、私はどんな服を着たいの?ワクワクする服ってどんな服?と考えるようになりました」結論は、「着たいものを着る!やっぱり、それに尽きますね」。


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