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政治・経済・投資 #介護崩壊前夜--相次ぐケアマネ殺傷事件が示唆するもの

「包丁やアイスピックを突きつけられた」――介護現場の知られざる現実を明らかにした実態調査と107の実名回答

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アンケート調査の結果を踏まえ、齊藤誠氏は各所に要望書を送付した(写真:筆者撮影)
  • 大月 えり奈 ルポライター・カメラマン・社会福祉士

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「集まった107人の声は、厚生労働相や東京都知事、神奈川県知事、埼玉県知事、日本介護支援専門員協会などに郵送しました。反応は、どこからもありません」――。
神奈川県厚木市で、ケアマネジャー(介護支援専門員)の事業所とデイサービスを運営する齊藤誠氏(44:株式会社せいげつケアリンク代表取締役)は、反応がないことは織り込み済みだという様子で語る。
1年前、同じ神奈川県の横浜市で、訪問中のケアマネが利用者に刃物で刺される事件が発生した(第3回URL)。齊藤氏は、国や自治体による具体的な安全対策が進まないことを危惧していたが、今年6月には埼玉県川口市でケアマネが利用者の家族に殺害される事件が起きた。
「痛ましい事件がこれ以上繰り返されないよう、現場の声を政策決定の場に届けたい」。齊藤氏はこうSNSで呼びかけ、ケアマネの労働実態調査を実施。集計結果を各所に送った。
社会福祉士の資格を持つルポライター、大月えり奈氏による連載【介護崩壊前夜――相次ぐケアマネ殺傷事件が示唆するもの】の第5回は、埋もれがちな介護現場の声を社会に届けようと奮闘する一事業者の取り組みにフォーカスする。

齊藤氏は、運営する事業所のX(旧Twitter)アカウントで、利用者と職員との交流を発信してきた。過去には、世間が賃上げに沸く中、コロナ禍の介護業界への打撃で従業員の賃下げをせざるをえなかった苦悩を赤裸々につづり、反響を呼んだこともある。

高齢者を支える仕事のやりがいと共に、介護保険制度の下で地域の基盤を守り抜く困難や課題について発信を続ける。その齊藤氏が今最も懸念していることの1つが、ケアマネが訪問先で襲われる事件が相次いでいることだ。従業員を守る立場として焦りが募る。

「今、現場で起きていることの実情を社会に正しく知ってほしい。そのためには『自分の気持ちを発信したくてもできない』『発信しても無駄だ』と諦めている人からも思いを聞かなければ」

株式会社せいげつケアリンク代表取締役の齊藤誠氏(写真:筆者撮影)

実態調査は6月半ばの9日間にわたってオンラインで実施した。質問の作成から集計に至るまで1人で手がけた。質問のうち、「殺害事件を聞いてどう感じたか」「過去に身の危険を感じたことはあるか」「国や自治体などに伝えたいこと」の項目は自由記述とした。そして、「実名」「実事業所名」で回答するというハードルを設けた。

「匿名でものを言うのは簡単。実名になると、言葉の重みが違ってくる。自分たちの未来をつくっていくという覚悟を示してもらうため、あえて、そうお願いした」(齊藤氏)

ハードルを設けたにもかかわらず、在宅サービスの従事者ら107人から回答が寄せられた。

川口の事件を聞いてどう感じたかという問いでは、「訪問が怖くなった」という率直な受け止めが見られたほか、「前兆はなかったのか」「事実が知りたい。対策は取られていたのか、それとも通り魔的なケースだったのか」「事業所でこのケースはどのように共有されていたのか」といった疑問も書き込まれていた。

アイスピック、日本刀、ナタ、猟銃まで…

国や自治体などに伝えたい内容については、事業所レベルでの危険回避には限界があり、抜本的に制度を見直してほしいという訴えが多かった。「困難なケースやハラスメント対応が増え、現場は限界に近い」「困難ケースに対応する公務員扱いの介護士や介護事業所を創設してほしい」というものもあった。

また、現在ケアマネに義務づけられているモニタリング(自宅での少なくとも月1回の面接)について、頻度や方法を見直すことを求める意見もあった。

現在、国や自治体が安全対策として打ち出している「複数人訪問」についても、人手不足による困難さのみならず、「ケアマネが担当件数の限界まで受け持たないと経営が成り立たない状況では(ほかの職員との同行は)難しい」と、介護報酬をめぐる課題も指摘された。

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