齊藤氏は、運営する事業所のX(旧Twitter)アカウントで、利用者と職員との交流を発信してきた。過去には、世間が賃上げに沸く中、コロナ禍の介護業界への打撃で従業員の賃下げをせざるをえなかった苦悩を赤裸々につづり、反響を呼んだこともある。
高齢者を支える仕事のやりがいと共に、介護保険制度の下で地域の基盤を守り抜く困難や課題について発信を続ける。その齊藤氏が今最も懸念していることの1つが、ケアマネが訪問先で襲われる事件が相次いでいることだ。従業員を守る立場として焦りが募る。
「今、現場で起きていることの実情を社会に正しく知ってほしい。そのためには『自分の気持ちを発信したくてもできない』『発信しても無駄だ』と諦めている人からも思いを聞かなければ」
実態調査は6月半ばの9日間にわたってオンラインで実施した。質問の作成から集計に至るまで1人で手がけた。質問のうち、「殺害事件を聞いてどう感じたか」「過去に身の危険を感じたことはあるか」「国や自治体などに伝えたいこと」の項目は自由記述とした。そして、「実名」「実事業所名」で回答するというハードルを設けた。
「匿名でものを言うのは簡単。実名になると、言葉の重みが違ってくる。自分たちの未来をつくっていくという覚悟を示してもらうため、あえて、そうお願いした」(齊藤氏)
ハードルを設けたにもかかわらず、在宅サービスの従事者ら107人から回答が寄せられた。
川口の事件を聞いてどう感じたかという問いでは、「訪問が怖くなった」という率直な受け止めが見られたほか、「前兆はなかったのか」「事実が知りたい。対策は取られていたのか、それとも通り魔的なケースだったのか」「事業所でこのケースはどのように共有されていたのか」といった疑問も書き込まれていた。
アイスピック、日本刀、ナタ、猟銃まで…
国や自治体などに伝えたい内容については、事業所レベルでの危険回避には限界があり、抜本的に制度を見直してほしいという訴えが多かった。「困難なケースやハラスメント対応が増え、現場は限界に近い」「困難ケースに対応する公務員扱いの介護士や介護事業所を創設してほしい」というものもあった。
また、現在ケアマネに義務づけられているモニタリング(自宅での少なくとも月1回の面接)について、頻度や方法を見直すことを求める意見もあった。
現在、国や自治体が安全対策として打ち出している「複数人訪問」についても、人手不足による困難さのみならず、「ケアマネが担当件数の限界まで受け持たないと経営が成り立たない状況では(ほかの職員との同行は)難しい」と、介護報酬をめぐる課題も指摘された。
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