おそるおそる打診したら引き受けてくれた。役所はNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』に出演した際、宮藤氏に「またぜひやりましょう」と言われて、声がかかるのを今か今かと待ち受けていたそうだ。
役所は冒頭の『リア王』のために半年以上前からダイアログコーチをつけて古いイギリス英語を特訓し、現場ではテストから全開だった。「一生懸命やってくれるうえに、想像を超えて面白くしてくれる。二重にびっくりしました」と磯山氏は言う。
「誰がおっさんや」と「もうええでしょう」
名を失った高瀬川は、「田中卓」という無名の俳優として配信ドラマ『闇のダークネス』の犯人役をつかむ。「誰がおっさんや」というせりふがバズり、注目を集めていく。
現実にも似たことがあった。24年のNetflix『地面師たち』で、ホームレスの佐々木を演じた当時76歳の五頭岳夫だ。不思議な存在感がネットでネタになり、彼は「超遅咲き」の俳優として一躍注目を浴びた。同作でピエール瀧演じる後藤の「もうええでしょう」が流行語になったことと併せて、時の人となったのだ。今では、あちこちの映画やドラマにさりげなく出ている。
無名の俳優が一夜で広がる回路は、すでに開きつつある。問題は、そこにたどり着くまでの道が開かれているかだ。
その問いを体現するのが、松山ケンイチ演じるチーフ助監督・川島一機だ。現場を仕切る腕は確かで、時代劇も研究しているのに、40歳を過ぎても監督になれず、過酷な現場で体を壊す。宮藤氏は「助監督としてあまりに有能すぎて、そのまま年を取ってしまった人」と説明する。
一方で配信ドラマ『闇のダークネス』の現場が男女半々で、紙の脚本を誰も持たないペーパーレス化が進んでいることも描かれる。
制作現場をここまで描いた意図を磯山氏に尋ねた。


※ログイン後、コメント入力が可能です。