打刻という日常の動線のなかに、わずか数秒で回答できる「問い」を置くことで、従業員に無理なく自身の体調や業務を振り返る機会を与えたのである。
従業員の行動変容を促した、出退勤時の「問い」
「スコキン」の導入とナッジの活用は、フェリコの経営指標に劇的な改善をもたらした。導入からわずか1年で達成されたその効果は、収益性の向上からコスト削減、そして従業員の健康増進に至るまで、多岐にわたる。図表2は、導入前後の主要な変化をまとめたものである。
この成果の背景には、日常の「問い」を通じた従業員の自発的な行動変容がある。
「セミナーやイベントは一過性で、やりっぱなしになりがちです。かといって、制度でルール化して強要しても反発があるだけで、自らの意識として行動変容はしません」
赤羽社長がそう指摘するように、日々の業務に溶け込んだセルフナッジこそが、従業員の意識変革の鍵となった。
たとえば、出勤時に「きょうの残業見込みは?」というアンケートを1週間継続して表示したところ、自身のタスク管理の甘さに気付いたスタッフの残業時間が自発的に減ったという。
また、「きょうはお客様が入った後にトイレチェックをしましたか?」という業務チェックの問いから、スタッフ自らがトイレ清掃を忘れなくなる仕組みづくりのアイデアを生み出し、積極的な業務改善へとつながった。
結果としてルーティーン作業のミスや抜け漏れが激減し、顧客からのクレームがゼロになった年度もあるほどまでに、サービスの質的向上をもたらしている。
健康面においても顕著な効果が現われた。
「微糖の缶コーヒーにはどのくらいの砂糖が入っているでしょう?」
「速歩きに最も適した時間は?」
といった健康クイズや啓発メッセージを毎日提示することで、スタッフが食習慣、運動習慣、睡眠などの生活習慣を自ら意識するようになった。これにより、当初の最大の課題であった「体調不良による当日欠勤」が激減したのである。


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