少人数で運営する予約制のヘッドスパ専門店において、スタッフの当日欠勤は顧客へのサービス提供に直接影響し、売上の機会損失のみならず、他の出勤スタッフへの業務負荷の偏りを引き起こす要因となっていた。
また、バックオフィス業務における非効率も大きな課題であった。当時は紙のタイムカードによるアナログな出退勤管理を行っており、毎月の集計作業に約8時間もの時間を要していた。
限られた人員で運営する中小企業において、この管理コストは決して無視できない負担であり、事務作業の省力化とIT化の推進が急務とされていた。
さらに、社長の赤羽亜希氏自身も、マネジメントにおける心理的な葛藤を抱えていた。
「経営者としては、どうしてもスタッフ全員を同じレベルに育てたいと思いがちで、従業員の欠勤が会社に与える影響についても、話せば通じる、説明すれば理解されると思い込んでいました」(赤羽社長〔写真〕、以下発言は同氏)
経営者側の成長に対する期待と、従業員個々が思い描く働き方の違い。このような見えない期待値のズレが、組織運営の難しさを生んでいたのである。
「ナッジ理論」を応用した出退勤管理ツールの導入
そこでフェリコが導入したのが、「健康経営」と「ナッジ理論」を掛け合わせたアプローチである。その中核を担ったのが、一般社団法人すこやか職場が開発・提供する、活動量計を用いた出退勤管理ツール「スコキン(すこやか出勤)」の導入であった。
ナッジ(Nudge)とは、2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー博士らが提唱した行動経済学の理論であり、「強制や命令を用いることなく、選択の環境をデザインすることで人々を望ましい行動へと自然に導く手法」である。
たとえば、トイレに「いつもきれいに使っていただいてありがとうございます」と掲示してトイレを汚さないよう働きかけたり、レジ前の床に足跡ステッカーを貼って整列してもらったりするような、自発的な行動をそっと後押しする仕組みを指す。
同社はこのナッジ理論を、日々の出退勤プロセスに組み込んだ「スコキン」を用いて、働き方を改革したのだ。「スコキン」では、従業員が出退勤時に活動量計を端末にかざすと、画面上に「きょうのお仕事予定は達成できましたか?」といった簡単なアンケートが表示される(下画像)。
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