その条件とは、「天つ神の御子の宮殿のような壮大な住まいを用意してください。そうすれば私はそこに隠れ控えますから」というものだった〉
神話には、じつは出雲大社の創建は明記されていない
これは一般に「国譲り神話」と呼ばれるものだが、ご覧のように現実には、オオクニヌシの側からすれば「国土を天つ神に奪い取られた」のであり、天つ神の側からみれば「オオクニヌシと地上世界を制圧した」のである。
『日本書紀』の神代巻をみると、出雲に降臨するのがタケミカヅチとフツヌシ(経津主神)の二柱、タケミナカタの逃走譚がないなどといった相違点がみられるものの、おおむねこれと同じような展開をもった神話が書かれている(神代下・第九段)。
要するに国譲り神話の基本的な構造は、「国つ神のオオクニヌシが国土を天つ神に献上し、その見返りとして自身が住むための壮大な住まいを用意してもらう」というものである。そしてこれは一般に、出雲大社の本縁譚(縁起譚)として解されている。
このときオオクニヌシが天つ神に用意して建ててもらった「住まい(神殿)」こそが出雲大社なのであり、だからこそ出雲大社はオオクニヌシを祀っているのだ、と解されてきたからである。
ただし、記紀の文章自体にそう明記されている――「国土献上の見返りに、天つ神がオオクニヌシのために《壮大な住まい=出雲大社の原形》を造営した」と書かれている――のかというと、そこには微妙な問題もある。
まず『古事記』をみると、「住まいを用意してください……」というオオクニヌシ側の一連の台詞が終わったあとに、「出雲国の多芸志(たぎし)の小浜に天御舎(あめのみあらか)」がつくられるという描写が続いている。
そして、この「天の御舎」をオオクニヌシの住まいとして造営された出雲大社の原形と解釈するのが通説となっているのだが、これには異論もある。
たとえば国文学者の三浦佑之氏は、「天の御舎」とは、天つ神が造営した出雲大社のことではなく、オオクニヌシが天つ神を饗応するために建てた「迎賓館」のことだと読み解いている(『出雲神話論』)。


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