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日本人はなぜ「まちがえた」と言えないのか――アインシュタインの警告から読む「知識人こそ暗示にかかりやすい」理由

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熱弁する男性
見通しが外れても、なぜ日本人は同じ専門家に頼り続けたのでしょうか(写真:Ryuji / PIXTA)
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2020年からの新型コロナウイルス禍では、「国民どうしが接触を8割減らせば、2か月で感染が収束する」といった専門家のシミュレーションがメディアを席巻した。あくまで「紙の上」で数字を弾いただけの話で、「生の現実」でないことは明らかだったが、当の専門家は自分の計算に国民が合わせるべきだと主張し、最後まで自説を譲らなかった。

戦争という「自傷行為」を治療したフロイト

実はこのアインシュタインの発言は、公刊された公開書簡の一部である。国際連盟の依頼を受けて、ひとはなぜ戦争をし、平和の実現にはなにが必要かを論じあうために書かれた(注2)。だが対話の宛先に、アインシュタインは国際政治の「専門家」ではなく、精神分析の創始者だったフロイトを指名している。

ウイルスであれ敵軍であれ、憎む相手の存在を完全にゼロにしようとして、かえって自分も共倒れになる自傷行為のようなことを、しばしば人間はしてしまう。知識人や専門家もまた、大衆と同じかそれ以上に、そうした病理に陥ってゆく。そこに、得ている専門知の高低による差は、存在しない。

だからアインシュタインは、分野違いだがメンタルヘルスのプロだったフロイトに、戦争をなくす方法を訊くことにした。コロナとウクライナの後を生きる、ぼくたちもまたその選択から、きっとヒントをもらえるはずだ。

「自粛は必要ですが、効果はありません」?

専門家がコロナウイルス禍で「活躍」した結果、過剰な対策が採られたのはほとんどの国で同じだ。ウクライナ戦争でも、欧米を中心とする西側諸国は基本的に、協力してロシアを封じ込めようと努力してきた。

だが日本にしか見られない、不思議な現象がある。

当初の見込みが「まちがっていた」とわかっても、それを口にせず、撤回しないことだ。だからずるずると、政府もメディアも同じ専門家を使い続け、方針を明示的に転換しないまま、従来の姿勢を引きずってしまう。

延期された東京五輪の目前で、繰り返される緊急事態宣言への不満が高まっていた2021年7月、当時は専門家の「暴走」に批判的だった医療人類学者の磯野真穂氏(現在は東京科学大学教授)と対談した。そこでぼくは、こんなふうに言っている。

〈Yahoo!JAPANのサイトでニュースを見ていると、「緊急事態宣言は必要?不要?」みたいなアンケートをよくやっていますよね。その結果が面白いんです。宣言の発令ないし延長等が「必要ですか、不要ですか」と訊かれると、ほぼ常に7~8割くらいの回答は「必要」なんです。しかし隣の記事をクリックすると、そこでは「緊急事態宣言に効果はあると思う?ないと思う?」のアンケートをやっていて、そちらでは8~9割が「効果はない」と答えていたりする(注3)。〉

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