ところが太宰は翌年、最初の作品集『晩年』を刊行すると、今度は芥川賞を自分にと川端に懇願する手紙を送った。「刺す」とまで書いた相手に、「何卒私に与へて下さい」と頭を下げたのだ。同じ頃、太宰は選考委員の佐藤春夫にも、受賞を乞う長大な手紙を書き送っている。
怒ったかと思えばすがりつく。太宰らしいといえば、太宰らしい話である。
川端康成とも縁が深い宇野千代
さて、太宰にからかわれた川端だが、実は宇野千代とも縁が深い。
昭和2(1927)年、川端は伊豆の湯ヶ島に、千代の夫・尾崎士郎を誘った。これをきっかけに、千代もたびたび湯ヶ島を訪れるようになる。千代は後年、川端が逗留していた宿「湯本館」に自分も泊まり、そこで小説を書いたと振り返っている。
湯ヶ島で千代が出会ったのが、『檸檬』で知られる梶井基次郎である。千代と梶井の親しさは、やがて尾崎との夫婦関係にも波紋を広げていく。
『ブラッサム』でも、川端夫妻をモデルとした人物が登場するという。小鳥を愛した川端が、ドラマでどう描かれるのか。籠から飛び出す小鳥のように、千代が新しい空へ羽ばたいていく姿とともに、注目したい。
【参考文献】
細川博昭著『大江戸飼い鳥草紙 江戸のペットブーム』(吉川弘文館)
磯野直秀著「明治前動物渡来年表」(『慶應義塾大学日吉紀要 自然科学』41号)
夏目漱石著『文鳥・夢十夜』(新潮文庫)
夏目伸六著『父・夏目漱石』(文春文庫)
太宰治著『もの思う葦』(新潮文庫)
東郷克美著『太宰治の手紙』(大修館書店)
『宇野千代全集』第12巻(中央公論社)
宇野千代著『生きて行く私』(角川文庫)


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