自分や家族が病気になったとき、海外で使える薬が日本では使えない。そんな事態を、私たちはどこまで現実のものとして想像しているだろうか。
アメリカのトランプ政権が進める医薬品の「最恵国待遇(MFN)」をめぐる報道が増えている。アメリカで突出して高額な薬価を、ほかの先進国の価格に近づける政策だ。トランプ大統領の政策は乱暴で実現性に乏しいと片付けられがちで、MFNもいつもどおりの横暴と思えるかもしれない。
公的制度で薬価を抑えてきた日本やヨーロッパ
しかし、本質は世界の医薬品イノベーションのコストを誰が負担するのかという問題である。アメリカは長年、高い薬価を通じて新薬開発を資金面で支え、そこで得た収益を次の研究開発に回してきた。一方、日本やヨーロッパは公的制度で薬価を抑えながら、成果を利用してきた面は否めない。「自国だけが多く負担する構造は維持できない」というアメリカの主張には、一定の合理性がある。
MFNはアメリカの薬価を先進国で最も低い水準に引き下げる仕組みだ。各国の製薬企業は巨大市場のアメリカで新薬に低い価格がつくのを防ぐため、日本での新薬の販売を避けるようになると懸念される。企業は損までして、日本の患者と市場を支えようとはしないだろう。
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