皮膚は単に体を覆う「壁」ではなく、外敵の侵入を防ぐとともに、免疫システムの最前線として働く重要な臓器であることがわかってきたのです。そして2000年代後半、「二重抗原曝露仮説(Dual allergen exposure hypothesis)」という考え方が提唱されました。
この仮説では、皮膚からアレルゲンが侵入するとアレルギーになりやすく、一方で腸から食べ物として摂取されるとその食べ物を「異物ではない」と認識し、アレルギーを起こしにくくなると考えられています。
特にアトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が低下している乳児では、湿疹から微量の食物抗原が入り込み、食物アレルギーのきっかけになる可能性があります。
きっかけとなった「ある事件」
この考え方を社会に広く知らしめた出来事が、日本で起きたあるせっけんによる健康被害でした。
このせっけんには加水分解コムギが含まれており、使用を続けた人の一部で小麦アレルギーが発症しました。その後、パンやうどんなど小麦食品を食べた際に、じんましんやアナフィラキシーを起こす例が相次いだのです。
この出来事は、「食べ物を食べて感作されるだけでなく、皮膚からも感作されることがある」という事実を広く知られるきっかけとなりました。それ以降、食物アレルギーは「食べ物だけ」の問題ではなく、皮膚の状態にも目を向ける必要があると考えられるようになったのです。
では、皮膚をしっかり守れば、食物アレルギーは予防できるのでしょうか。
この点については、現在も研究が続いています。乳児期から保湿剤を使用することでアトピー性皮膚炎の発症を減らせる可能性を示した研究がある一方、その後の大規模研究では、保湿だけで食物アレルギーやアトピー性皮膚炎を確実に予防できるとは言えないこともわかってきました。
最近では、湿疹を適切に治療しながら、医師の管理のもとでアレルギーの原因となりやすい食品を適切な時期に少量ずつ摂取することで、食物アレルギーを減らせる可能性を示した研究も報告されています。


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