もともと同工場はスイスのシュタッドラー社が投資する予定だったが、これが白紙となったことでINKAが設備も揃えなくてはならなくなった。国家的プロジェクトであったため、バニュワンギ工場の稼働は前政権から課せられた至上命題であった。
同工場の整備にあたっては、国から約0.97兆ルピア(約85億円)の資金投入を受けている。2024年度の投資活動によるキャッシュフローは他の年度に比べて突出した約1.8兆ルピア(約158億円)のマイナスで、バニュワンギ工場向けの投資が一因とみることができるだろう。大規模な設備投資を進める一方で、その後、営業活動から十分な資金を生み出せなくなったことが、資金繰りを圧迫したとみられる。
ある出入り業者は、「一部サプライヤーへの支払いが停滞しており、INKAへの納品をストップさせている状況」と言う。どうやら、海外への支払いを優先したために、国内サプライヤーが後回しになってしまっているようだ。そのために通勤電車の10編成目以降、客車の41編成目以降の製造が進められない模様だ。工場労働者の数も大幅に削減しており、賃金未払いというスクープまで報じられている。生産レーンはほぼ停止状態と思われるが、生産し、車両を引き渡されなければ発注者からの支払いもなく、デッドロックの様相だ。
鉄道側は車両不足が深刻
しかし、発注者であるKAI、KCIとしても、納期の遅延は自らのビジネスに関わる大問題だ。とくにジャカルタ首都圏の通勤電車は車両不足が慢性化しており、朝ラッシュ時に積み残しが出るなどすでに影響が出ている。国のプロジェクトとして、線路側の改良も進められている中、インフラ側が完成しても車両が足りないというちぐはぐな状態にもなりかねない。
そこで今回、中古車両輸入の議論が再燃したという格好だ。
12両編成7本という数は、現在、INKAで生産がストップしている車両数と一致する。本来であれば、遅くとも今年中にINKAから納品されるはずだった。また、KCIは今年、追加で8編成のINKAへの発注を計画していたが、これも見合わせざるをえない。つまり、この分までを中古車両でひとまず調達したいというのが、KCIの希望のようだ。

