妊娠禁止期間中、Nさん夫婦は今後について何度も話し合った。夫婦2人の生活を続けるのか。もう一度妊娠を望むのか。また異常妊娠だったらどうするのか。そして、再び挑戦することを決めた。
夫婦で生活習慣を見直し、ウォーキングやストレッチを始め、お酒やカフェインを控えるなど、できる範囲で体を大切にする生活に切り替えた。
お腹に新たな命が宿るも「手放しで喜べない」
そして24年5月、ついに医師から妊娠許可が出た。さらに幸いなことに、妊娠許可が下りてから間もなくして、Nさんのお腹に新たな命が宿ったのだ。
「妊娠できたことは、本当に嬉しかった。でもそれと同じくらい、また胞状奇胎だったらどうしよう……という強烈な不安感にも襲われて。心から望んでいたはずの妊娠なのに、手放しで喜べなかったんです」
Nさんを喜びから悲しみのどん底へ転落させた異常妊娠の経験は、Nさんの脳裏にしつこくつきまとった。妊娠した喜びは確かに感じているはずなのに、健診時の内診では緊張と恐怖で手が震えることもあったという。
心拍が確認できても、母子手帳を手にしても、「もしかしたらまた胞状奇胎かもしれない」「抗がん剤治療が必要になるかもしれない」そんな最悪のケースが頭をよぎり、喜びと不安は常に半々の状態だった。
「素直に喜んでしまうとダメだった時の悲しみが強くなってしまうから、無意識にポジティブな気持ちをセーブしていたのかもしれません。安定期に入っても気持ちはずっと安定しなくて。妊娠報告も、本当に近しい人にしかしていませんでした」
臨月が近づきいよいよお腹が大きくなってくると、ようやくNさんは徐々に「この子はきっと大丈夫」と心から思えるようになっていったという。
そして予定日を数日過ぎた頃、Nさんは念願だった母親になった。Nさんは当時の心境をこう語る。
「夫婦2人での生活も十分に楽しかったし、再び妊娠することに不安や恐怖心もありました。でもやっぱり、チャレンジしないで終わる方が、人生を長い目で見た時の後悔が大きいと思って。決して幸せいっぱいの妊娠生活ではなかったけれど、産院で初めて我が子の泣き声を聞いた時の喜びは、一生忘れられません」


※ログイン後、コメント入力が可能です。