2回目の手術から1週間後、1回目の手術で取り出した組織の病理検査結果が出た。
胞状奇胎には、胎児成分を全く含まない「全胞状奇胎」と、一部に胎児成分を含む「部分胞状奇胎」がある。Nさんの場合は前者だった。
「妊娠したはずなのに、陽性反応も出たのに、自分のお腹の中には胎児の成分が何もなかった。すごく虚しい気持ちになりました」
抗がん剤治療は“想像を超える痛み”
2回目の術後もNさんのhCG値は下がらず、むしろ術前より上昇。医師からは大きな病院への転院と、抗がん剤治療が必要になる可能性を告げられた。
「最初に産婦人科を訪れた時は、幸せな気持ちでいっぱいだった。でも、わずか数カ月で感情が180度変わってしまって。夫婦で新しい命を望んだだけなのになって、釈然としない気持ちでした。でも、この状態を放置するのは危険で、治療には抗がん剤投与が有効だと説明されて、次に進むしかありませんでした」
転院後に行ったCT検査の結果、肺にも病変が見つかり『侵入奇胎』と診断された。
「hCG値が下がらない理由が分かって少し安心したものの、この時点で私自身は日々の生活で特に不調は感じていないんです。それなのに抗がん剤治療をしなくてはいけない。こうなってしまった原因も分からず、がんになったわけではないのに抗がん剤治療が必要だなんて、なんて先が見えない病気だろうって思いました」
侵入奇胎と診断された翌週から、筋肉注射による抗がん剤投与が始まった。
「最初はインフルエンザの予防接種みたいな感じかと思っていたんですが、これが想像を超える痛みで。普通の注射よりもはるかに太い針を、10秒以上かけてゆっくりお尻に注射するんです。毎回目に涙がうっすら浮かぶほどの激痛でした」
それでもNさんは、hCG値が下がることを願って治療を続けた。1クール後にはhCG値が大きく低下。治療の効果が数字に表れた一方、2クール目の後半には副作用にも悩まされた。
「幸い脱毛症状はなかったんですが、吐き気がひどくて……。口内炎だらけで、歯磨きも食事もつらかった。一時は肝機能まで弱ってしまったんですが、順調にhCGの値が下がってくれたことだけが救いでした」


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