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朝ドラ《ブラッサム》モデル・宇野千代が貧乏でも嫌いな文学を書かなかった訳「一生のうちで一度も燃えない人は不幸」

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宇野千代 ちょっと自伝
作家・宇野千代が現役にこだわり続けた理由とは何か?(画像:『宇野千代 ちょっと自伝』より)
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前田久吉さんにもお世話になった。ボーイフレンドかしら、恋人がかった感じの友人。水野さんとも前田さんとも、わたしは決してくっつかなかったのよ。それなのにとても親切にして貰って……わたしの人生にはそういう人がいっぱいいたのよ、有難い人生だったと思いますね。

本屋さんがリヤカーや自転車を引っぱって、直接仕入れにくるの。うちの店へもっと配本して下さいって、お世辞に大根だの葱だの持ってきてくれる本屋さんまでありました。うちの畑でとれましたから、なんて言って。あの頃は焼け跡に野菜を作ったりみんながしてましたからねぇ。

雑誌なんていうものが少ないし、娯楽がひとつもない、そういう世の中でしたから、『スタイル』だって引っぱり凧(だこ)。

きっといまでも、昔わたしたちがやったように、何か大変な仕事を小人数で始めている人たちって、どこかにいるんじゃないかしら。それが何年か辛抱するうちに、ビルを建てるような凄い発展をするかもしれない……。日本人はよく働く民族なんですからね。

文学のためなら身を捨ててもいい

何かのために身を捨てても、という気持、あるのが当然です。それはなんであってもいいのよ。

『宇野千代 ちょっと自伝』(マガジンハウス)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

そのために身を捨てても、と思えるようなことを持っている。そのほうが幸せだなんていうより、誰もが持っていなきゃおかしいのよ。多分、「仕事のため」なら身を捨てても、という燃ゆる思いを持っている人が、現代にもいるでしょう。

心が燃えるんだよ、一生のうちで一度も燃えない人は不幸。亭主のために身を捨てるのでもいいんです。わたしは、別の意味で言えば、文学のためなら身を捨ててもいい。それから男のため、という気持にも、何回もなりましたよ。

文学のために身を捨てるという意味は、わたしは嫌いな文学をひとつも書かなかった。絶対に、たとえば書いたほうがよっぽどトクだなぁ、と思うような注文がきても、嫌なものは絶対に、書くことを許さなかったのよ、自分に。どんなにお金が……貧乏だったときも、一途に、この文学のためなら身を捨てても、と思えるものしかしなかった。その点では後悔がありません。

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